【ハプバーと風営法】SB再開とオフホワイト深夜営業について

2022-06-18

追記(2022/07/01)

新宿オフホワイトが、本日(7月1日)より深夜営業を開始することをアナウンスした。

https://twitter.com/offwhitebar/status/1542612745996029952?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1542612745996029952%7Ctwgr%5E3e6c8a5ebe12f4dba0148e699356ef3550c91096%7Ctwcon%5Es1_&ref_url=https%3A%2F%2Ftips.jp%2Fu%2Fhap-gachi%2Fa%2FYHSbIlBY

プレオープン営業は、4月8日〜6月30日までと異例に長期化した。
無事に本格営業を開始し、関係者は安堵していることだろう。

はじめに

渋谷SBの再開と新宿オフホワイトの深夜営業開始に関する動向が、ハプバー業界の将来を占う上で重要な事項である旨、Twitterで投稿したところ、一定の反響をいただいた。

今回のコラムは、風営法の解説を織り交ぜながら、この点を詳細に深く掘り下げていきたい。

最初に取り上げる渋谷SBについては、5月8日未明に摘発を受けて営業を休止している。

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しかし、その一か月後の6月9日頃に営業再開準備中であることがHPで告知されたのである。現在は「いつ」「どのような形態」で営業を再開するのかに注目が集まっているところだ。

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続いて、新宿オフホワイトは4月8日にプレオープンしたものの、本稿執筆の6月18日においても、グランドオープンを迎えておらず、未だに深夜営業をしていない。
こちらも一日も早い本格営業を待ち望む声が大きい。

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この両店舗の命運を左右するのが、今回のテーマである「風営法」だ。

正確には「風俗営業などの規制及び業務の適正化などに関する法律」という、この法律について、さっそく解説していきたい。

風営法とは何か?

まず、「風俗」とは何か?
辞書を引用すると以下のとおりだ。
実は、性的な意味合いはなく、社会における風習を意味する言葉である。

1 ある時代やある社会における、生活上の習わしやしきたり。風習。「明治の―」「性―」

2 風俗店のこと。また、それに関係する事柄。「―産業」

3 身なり。服装。

4 身ぶりや態度。身のこなし。

デジタル大辞泉

次に、風営法の第1条を引用しよう。善良な風俗、清浄な風俗環境とある。

(目的)
第一条 この法律は、善良の風俗と清浄な風俗環境を保持し、及び少年の健全な育成に障害を及ぼす行為を防止するため、風俗営業及び性風俗関連特殊営業等について、営業時間、営業区域等を制限し、及び年少者をこれらの営業所に立ち入らせること等を規制するとともに、風俗営業の健全化に資するため、その業務の適正化を促進する等の措置を講ずることを目的とする。

風営法

風営法が目的とする風俗とは何か?以下は国会のおける官僚の答弁である。

したがいましてこの法律の規制する目的は、いわゆる飲む打つ買うという言葉に代表されますような人間の欲望についての生活関係を律する法律である。

政府委員国会答弁

答弁を読むと、風営法は「飲む」「打つ」「買う」を取り締まるための法律であることが分かる。
今回はこのうち「飲む」だけに絞って法律を説明することになる。
(ちなみに、「買う」については、法で「性風俗関連特殊営業」と定義されている。)

次にハプバーは風営法上、どのような風俗営業に当たるのか?

(用語の意義)
第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

一 キヤバレー、待合、料理店、カフエーその他設備を設けて客の接待をして客に遊興又は飲食をさせる営業

二 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、国家公安委員会規則で定めるところにより計つた営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの(前号に該当する営業として営むものを除く。)

三 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの

四 まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業

五 スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)

風営法

4と5は論外、1はキャバクラのようなものだろうから除外、暗い店舗で営業する2や、狭い個室(ルーム)のある3ではないかと思うかもしれない。
実はどれにも当たらないのだ。ハプバーは風営法の風俗営業ではないのである。(もちろん性風俗関連特殊営業でもない。)

なぜそう言えるのか?
次の法律のとおり、風俗営業は深夜に営業できないのである。
(条例で緩和されることがあるが、朝まで営業が許可されるようなことはない)

(営業時間の制限等)
第十三条 風俗営業者は、深夜(午前零時から午前六時までの時間をいう。以下同じ。)においては、その営業を営んではならない。ただし、都道府県の条例に特別の定めがある場合は、次の各号に掲げる日の区分に応じそれぞれ当該各号に定める地域内に限り、午前零時以後において当該条例で定める時までその営業を営むことができる。

一 都道府県が習俗的行事その他の特別な事情のある日として当該条例で定める日 当該事情のある地域として当該条例で定める地域

二 前号に掲げる日以外の日 午前零時以後において風俗営業を営むことが許容される特別な事情のある地域として政令で定める基準に従い当該条例で定める地域

同上

ハプバーと風営法

では、ハプバーは風営法でどのような営業形態なのか?

(深夜における酒類提供飲食店営業の届出等)
第三十三条 酒類提供飲食店営業を深夜において営もうとする者は、営業所ごとに、当該営業所の所在地を管轄する公安委員会に、次の事項を記載した届出書を提出しなければならない。

同上

実はハプバーは、普通のBARが営業の際に取得する「深夜酒類提供飲食店営業」(いわゆる「深酒」)で朝まで営業しているのである。

話は逸れるが、ガルバが朝まで営業しているのも深酒営業だからだ。
キャバクラは接待があり、風俗営業なので深夜に営業できないが、ガルバはカウンター越しであり接待ではないという法的な扱いになっているため、深酒営業で朝までお店が開いているのである。
なぜならば、警察庁が通達として出している「解釈運用基準」で以下のように定められているからである。
(ちなみに、通達というのは法律の解釈を示す文書である)

3 接待の判断基準

(1) 談笑・お酌等
特定少数の客の近くにはべり、継続して、談笑の相手となったり、酒等の飲食物を提供したりする行為は接待に当たる。
これに対して、お酌をしたり水割りを作るが速やかにその場を立ち去る行為、客の後方で待機し、又はカウンター内で単に客の注文に応じて酒類等を提供するだけの行為及びこれらに付随して社交儀礼上の挨拶を交わしたり、若干の世間話をしたりする程度の行為は、接待に当たらない。

解釈運用基準

深酒営業のハプバーにおける「ルーム」はどのような扱いになっているのか?
このような疑問を持った人もいるだろう。

実は、引用した規則にあるとおり、狭い部屋を設置することはできないし、そこに鍵を掛けることも禁止されているのである。
おそらくではあるが、ルームを客室ではなく、スタッフの控室や物置として申請することで規則から逃れているのではないかと考えられる。
(またはルームを個室として設けないで、カーテンで仕切っている)

深夜における飲食店営業の営業所の技術上の基準)

第九十九条 法第三十二条第一項の国家公安委員会規則で定める技術上の基準は、次のとおりとする。

一 客室の床面積は、一室の床面積を九・五平方メートル以上とすること。ただし、客室の数が一室のみである場合は、この限りでない。

二 客室の内部に見通しを妨げる設備を設けないこと。

三 善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備(第百二条に規定する営業に係る営業所にあつては、少年の健全な育成に障害を及ぼすおそれのある写真、広告物、装飾その他の設備を含む。)を設けないこと。

四 客室の出入口に施錠の設備を設けないこと。ただし、営業所外に直接通ずる客室の出入口については、この限りでない。

風営法施行規則

個室としてのルームを客室と判断された場合、風営法3号営業になり、深夜営業が出来なくなってしまうのである。(あるいは違法に深夜営業をしているという扱い)

  (用語の意義)
第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。  

三 喫茶店、バーその他設備を設けて客に飲食をさせる営業で、他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの  

風営法

そうすると、鍵付きの個室のネットカフェはどうなのだろうか?
という疑問が湧くだろう。

実は飲食を提供しないことで規制を回避しているのである。

ルームに飲み物を持ち込むことが禁止されているのも、清掃が問題ではなく、風営法によるものだったのである。

話を元に戻すと、深酒営業の届出をして受理されれば、ハプバーを営業できるのか?
最近はそうではなくなってきているようだ。

数年前に「特定遊興飲食店営業」という営業形態が定められたからである。

(用語の意義)
第二条 この法律において「風俗営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業をいう。

11 この法律において「特定遊興飲食店営業」とは、ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前六時後翌日の午前零時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)をいう。

同上

手短に説明すると、特定遊興飲食店営業というのは、スポーツバーのようにお酒を出して、お客さんに朝まで遊んでもらうような業態である。

推測であるが、新宿オフホワイトは、深酒営業ではなく、特定遊興飲食店営業に該当するという指摘を警察から受けているのではないだろうか。

一方、同時期にプレオープンし、いち早く深夜営業を開始した大久保ウベアは特定遊興飲食店営業を取得したのではないだろうか。
(オーナーはそのようなことをTwitterで示唆している)

特定遊興飲食店営業は、店舗面積の規制などが深酒営業よりも厳しいだけでなく、届出制ではなく、許可制であるため、取得が困難である。
今後、ハプバーの営業に特定遊興飲食店営業の取得を要求されるようになれば、実質的なハプバー出店規制であると思う。

現に4月8日にプレオープンした新宿オフホワイトは、2か月以上も深夜営業ができないという事態に陥っている。
(同店は7月1日にグランドオープンし深夜営業も開始した。プレオープン期間が長期化したのは、採用などに時間をかけたのが理由であるようだ)

営業再開が見込まれる渋谷SBについても、特定遊興飲食店営業取得の問題があり、ハプバーとしてオープンできるかは不透明である。
(8月5日にロシナンテとしてオープンした)

【ハプバー摘発の歴史】おでんくん、SB摘発を間一髪で逃れる

以上のように、この2つのお店の動向がハプバーの将来がかかっているといっても過言ではないのである。
状況が進展したら、改めて報告させていただきたい。

【了】

【更新履歴】
2022/06/18公開
2022/07/01追記
2022/09/23新サイトへ転載・追記

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