【アングラ出会いBAR】渋谷ジャバウォックの研究

2023-10-17

Z世代のアンダーグラウンド(2024/2/10追記)

ジャバウォック開店直後のコラムにおいて私は、「約束は成功されているようなものである」と記したが、いよいよそれは現実のものとなった。実際、ジャバウォックについて記した当該コラムも、Google経由でのアクセスが増加しているし、アングラ関係者からも、「これからの時代はこっちなのか」という、ジャバウォックについての本音が漏れ伝わってくるからだ。

若者が多くオシャレな雰囲気のある、渋谷の道玄坂に店を構え、既存アンダーグラウンドより入場料を半分程度に抑えて、そのうえで店内でコミュニケーションを完結させず、「連れ出し」よって、店外で関係を発展させるというコンセプトは見事にヒットしたのである。

それに加え、既存アンダーグラウンドで付きまとうリーガルの問題をクリアしたことや、SNSと日常生活が一体化した現状を踏まえて、連絡先交換を許容した点も成功要因として挙げられるだろう。

特に「連れ出し」をSNSを可視化したというのは斬新な「発明」であったと思う。
ジャバウォック以前にも、店のルーツがアンダーグラウンドにあることをそれとなく謳ったBARは存在していたが、明確なコンセプトを単なる打ち出せないまま普通のBARへと転換していった店が多かったように思う。(当初より普通のBARにする予定であったのかもしれないが)

しかし、ジャバウォックの場合は、「連れ出し」を可視化することで、既存のアンダーグラウンドにあった期待感や緊張感を維持しているように思えるし、それが集客の原動力になっているように思える。

もはやジャバウォックは「Z世代のアンダーグラウンド」と言っていいだろう。

もちろん、そのようなコンセプトを現実の店舗として実現させたマネジメントの力も大いに評価されるべきだ。

そして何もよりも、ジャバウォックの台頭によって、伝統的なアンダーグラウンドの価値観を墨守する店と、Z世代に向けて新しいコンセプトを提供する店の棲み分けが明確になったことが界隈にとっては大きいように思う。

今後、ジャバウォックが渋谷以外のエリアにも展開すれば、業界の戦力分布図も状況は大きく変わるに違いない。

そのような意味でも、ジャバウォックの動向からは目を離すことができないのである。

【了】

ジャバウォックに界隈の注目が集まる

ここのところのアングラ界隈は、渋谷にオープンしたアングラ出会いBAR「ジャバウォック」の話題で持ちきりである。

渋谷ロシナンテや渋谷ミルフォイユなどのコラムにも注目されており、ジャバウォック人気の波及効果は計り知れないところだ。

【追悼文】渋谷ロシナンテのクローズについて
【会員制ダイニングバー】渋谷ミルフォイユの研究

以前にもORCAグループのコラムに追記する形で、渋谷ジャバウォックについては取り上げたが、その人気ぶりに応える形で、今回は新たに独立したコラムとして、改めて同店を取り上げることとしたい。

【店舗分析】orcaグループの歴史と、圧倒的な「攻め」の経営

コラムのタイトルを『ジャバウォックの研究』としたように、ジャバウォックが注目を浴びる背景について、巧妙に設計された同店の営業スタイルについて深く検証する。

まず同店の強みとして挙げられるのは、価格設定と立地である。執筆時点での料金システムは、ビールを含む飲み放題で、男性は平日5千円、週末・祝前日7千円、女性は無料という破格である。

男性の入会金を5千円としたことや、ドリンクをセルフサービスとして、オペレーションコストを削減したことにより実現した画期的な価格設定であることに異論の余地はないだろう。

上記の価格を実現しつつ、場所は渋谷の道玄坂。それもラブホ街のど真ん中という好立地だ。

オープン前のアナウンスの時点より、このような価格と立地条件であれば、成功は約束されているようなものであると考えていたが、いよいよそれは現実のものとなりそうである。

加えて、アングラに通暁したスタッフが運営や企画に携わっており、以下に記すようなシステムの改善がなされている点も特筆に値する。

具体的には、飲み放題で女性無料、男性低価格というスタイルは、錦糸町のノンハプバーもぐらをリファレンスにしたものであると考えられるが、渋谷ジャバウォックはこれに改良を加えているのだ、

アングラの伝統を踏まえて、掲示板を設置しているのである。さらにXで「連れ出し速報」を配信している。この二つにより、状況が「可視化」され、お店のコンセプトがより明瞭になったと評価できる。

店内レイアウトについても、同スタイルのノンハプバーもぐらと比較しながら分析していきたい。

ドリンクはノンハプバーもぐらと同様にセルフサービス。

店舗面積については、渋谷という立地もあり、ノンハプバーもぐらに比べればコンパクトになっている。

しかし、ノンハプバーもぐらと決定的に違うのは。店内中心に設置された、客同士が向かい合う長いカウンターテーブルである。

比較的広いスペースでカーペットのフロアに自由に座れるノンハプバーもぐらとは異なり、ジャバウォックはカウンターに座らなければならない。ノンハプバーもぐらより緊張感があることは言うまでもないだろう。しかし、アングラ出会いBARというコンセプトを考えれば、実に合理的な店舗設計である。

基本的にはスタッフと対面しないため、一般的なBARと比較すれば、漠然と長時間にわたり滞在するという雰囲気ではないのかもしれない。しかし、それはこの店のコンセプトであり、お店とユーザーのメリットにも繋がりうると認識すべきである。

つまりお店にとっては回転率が上がり、ユーザーにとってはマッチングのチャンスが高まるような、店舗レイアウトがなされているということである。

この店舗レイアウトは、破格ともいえる価格設定を支えているだけでなく、道玄坂のラブ街という立地条件の良さをさらに引き出しているのだ。

生まれ変わる渋谷

渋谷といえば、SBがクローズし、その後継のロシナンテも早期に閉店したことから、アンダーグラウンドの灯が消えってしまったような印象を持つ人も少なくないように思う。

実のところ、かつての錦糸町も同じような状況であったのだ。それはアフロディーテとノーダウトが同時に閉店したからである。

【錦糸町ショック】ノーダウト、7月末にアフロディーテと同時閉店
【物語の終焉】錦糸町アフロディーテ(サキュバス)とは何だったのか?

しかし、その後は、大型SMバーのミラージュがオープンしたり、アフロディーテ跡地にノンハプバーもぐらが移転し、大箱にリニューアルするなど、新たなアングラエリアとして盛り返しているのは衆目の一致するところである。

【錦糸町】変態バーから大箱SMバーまでの20年史

渋谷ジャバウォックに続き、執筆時点の本日11月2日には、「澁谷秘密遊戯」というアングラコンセプトのBARがプレオープンするなど、渋谷にも新たな胎動を感じるのである。

共存共栄で渋谷がかつての賑わいを取り戻すことを願って止まない。【了】

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