最後のハプニングバー(2023/04/01 追記)
昨日の営業で渋谷ロシナンテがクローズした。
私から最後の言葉を贈らせていただきたい。
ありがとう、そしてさようなら。
全てのハプニングバー。
レクイエムを捧げる
渋谷ロシナンテが3月末でのクローズを発表した。
私にも予め情報が伝わっていたことから驚きはなく、ただ寂しいだけである。
何の驚きもないからこそ、こうして正式な発表文を読むと、その分だけ救われない気持ちになるのは私だけはないはずだ。
ご迷惑になるかもしれないと思いながらも、渋谷SBの跡地にオープンした同店を応援したい気持ちから、度々コラムで取り上げてきたのはご承知のとおりである。
レイクエムを捧げることで、同店についての最後のコラムとしたい。
期待と失望
渋谷SBの跡地に後継ともいえる渋谷ロシナンテのオープンが発表されたとき、界隈は祭りともいえる狂乱になった。
かつての祝祭が復活すると誰しもが信じて疑がわなかったのである。
しかし現実は予想以上に厳しいものであった。
レギュレーション強化によりフロアーでは日常生活と同様の振る舞いが求められ、併設されているレンタルルームの1時間使用料は8千円。
にもかかわらず、入場料(1万6千円)、入会金(6千円)と従来とおりの価格設定であったからだ。
ほどなくして、レンタルルームの使用料は、渋谷SBと同じ2千円に引き下げられたものの、失望感を埋めるには至らなかった。
とはいえ、スタッフを責めるものは誰もいなかったように思う。
時代の趨勢であるとして諦めるほかなかったのである。
期待が大きかっただけに、その反動も大きく、初日のオープンに駆け付けた常連は唖然とするほかなかったと聞き及ぶ。
「最高の立地に、最高のスタッフがいるのになぜだろうか」
私も渋谷SBクローズと同様の理不尽さを感じずにはいられなかったのである。
時代のはざまに
渋谷ロシナンテはコロナ渦を経て、世代交代や価値観の移り変わりにも苦悩していたように思う。
コロナ収束後は、Z世代と呼ばれる若年層にお客が大きく入れ変わったのである。
しかし、かつての渋谷SBの復活を望むOB/OGも多かった。
渋谷ロシナンテが新旧2つの価値観に板挟みとなっていたことは想像に難くない。
そうであるからこそ、Twitterを駆使した情報発信についても、どこか中途半端な印象であったし、新しいお店のように毎週イベントを開催するというようなことも行われなかった。
割安のお店が増えてくるなかで、価格体系についても圧倒的に不利であった。
最高の立地、最高のスタッフであるにもかかわらず、最後まで歯車はかみ合わなかった。
たとえば、入場料3000円の箱貸しイベントなどは話題を集めるには絶好のチャンスであったと思う。
しかし、イベント発表は開催の3日前であるし、すでにクローズが決まっているのである。
このようなイベントがオープン当初より開催されていればと思うのは、私だけではないだろう。
渋谷ロシナンテの音響設備とスペースがあれば、DJイベントが盛り上がることは約束されていたようなものであったが、タイミングが遅すぎた感は否めない。
ハプバーの終焉
渋谷ロシナンテのクローズは、一つの時代の終わりを象徴しているかのように思える。
SNSで覆いつくされた世界では、偶然のもたらす眩い光は渋谷の地下には届かないのだ。
あの祝祭の日々は二度と帰ってこない。
多幸感に包まれたあの空間で、眩暈のなか自意識が解放されることもない。
しかし、あの刹那は多くの人々の記憶へ永遠に刻まれるのである。
渋谷ロシナンテのクローズはハプバーの終焉だ。
以前に私が記したとおり、「ポストハプバー」の時代が本格的に到来したのである。
そうであるからこそ、この文章はすべてのハプバーに対するレクイエムでもある。
最高のスタッフと仲間に心から感謝の気持ちを捧げたい。
お疲れ様でした。
本当にありがとうございました。
【了】