追記(2023/01/02)
新宿エンカウントがオープン1ヶ月を迎えた。システムの更新があったようなので内容を補完したい。
まずは週末深夜営業の男性料金について、23時半以降の滞在は延長料金の3000円が掛かることとなった。
それに加えて、カップル同伴割引が2000円から3000円となった。
前者については、終電で帰宅するのであれば、週末でも従来料金と変わらないという点が特色だ。
コロナ渦以降の傾向として帰宅時間が早まっているので、早い時間に集客を集中させる施策なのかもしれない。
週末料金を払ってしまったので、元を取るためにただ朝まで滞在するということもなくなるので、時間の節約になるのではないか。
メリハリのある時間の使い方が出来るので、さほどネガティブではないと思う。むしろ、週末であっても「時短」で遊ぶというコンセプトが徹底されたように感じられる。
後者については、カップルの集客に力を入れている様子が伺える。
これまでは数多くの店でカップル料金が廃止されるなど、カップルにとってはアゲインストな状況が続いていたが、近隣に大箱のカップルバーが出店するなど潮目が変わりつつあるなかでの、対応となったように考えられる。
週末にはイベントが企画されているほか、各種キャンペーンも新たに展開されており、引き続き集客に積極的な姿勢を見せていることから、オープン一ヶ月としては順調な印象を受ける。
話題は移るが、“Encount”という言葉は本来の英語には存在しない。
もともとは偶然遭遇するという意味を持つ“Encounter”という英語であったが、日本語に取り入れられた際、言語学で「語尾音消失」と呼ばれる現象により発音が省略された結果、“Encount”(エンカウント)という和製英語になったものと考えられる。
エンカウントは、英語本来の「偶然遭遇する」というニュアンスを残しつつも、RPGで敵キャラクターと突然遭遇し、移動画面から戦闘画面へ遷移することを示す新しい言葉である。
4時間半という限られた時間の中で、異性と偶然出会い、別のシーンへ転換するような空間を提供したいーー
Dからエンカウントへの店名変更は、お店のそのような願いが込められているかのようだ。
現実世界がSNSと結合した結果、計算可能性と確率論が世界を覆い尽くし、アンダーグラウンドな空間までもがフラット化した。
そこにかつての祝祭はない。
しかし、ここへきて「Twitter縮小」を宣言する店が出てくるなど、SNSに抗う動きも出てきた。
このような運動を私はこう言い表したい。
「脱SNSによる高次元での偶発性の恢復」
エンカウントのコンセプトも、そのようなSNSからの解放を目指すものだと信じたい。ミニマルな時間と空間は、そのような期待感を私に抱かせるからだ。
去年の界隈流行語大賞は、「到底納得できない」で新宿5丁目のお店が受賞した。
今年は歌舞伎町から「エンカウント」が始まるーー
追記(2022/12/17)
店名をDから変更して以降、Webサイトが更新され、「マッチングペアルーム(個室)」「化粧室シャワー完備」という記載がある。
男性入場料が10,000円(12/30までは入会金5,000円が無料)であることを考えれば破格である。
また、平日の営業時間についても、Webサイトでは"Last"という表記(たいていの場合、お客さんがいなければ24時ころの閉店)になっていたが、Twitterでは23:30クローズと明記していることから、週末営業にリソースを集中させたものと考えられる。
歌舞伎町において平日に深夜営業しないことに加え、平日・週末の料金を同一化した点も画期的であるように思える。
平日は短時間営業にすることで、週末の料金を下げることが目的であるように考えられるからだ。
そもそもコロナ以降は深夜営業での客入りが厳しい傾向にあるので、思いきって平日深夜営業を廃止するというのも新店であるからこそできる大胆な戦略である。すでに常連客が平日にもついている既存のお店では到底無理だろう。
平日は終電で帰る客層をターゲットに短時間で楽しむスタイルを提唱すればいいだけで、それで満足してもらえれば何の問題もないし、週末料金のコストを下げられるのでメリットしかない。
「平日 19:00~23:30の4時間半、飲み放題つきの1万円の短期決戦」
それは現実的でありながらも、極めて魅力的な選択肢のひとつだ。
いままでは多くの店で、長時間滞在するというスタイルが暗黙の裡に築かれていたようであるが、時代に合わせた変化も必要かもしれない。
そのような変革を実践できるのは、新宿エンカウントのような新しいお店だけである。
店名がDからEへ変わったように、歌舞伎町界隈も新たなフェーズへ移行するのか?
引き続き同店の動向をフォローしていきたい。
追記(2022/12/14)
DがEになった。
当初、Dという名前でオープンしていたが、本日12月14日に店名をENCOUNTに変更し、グランドオープンを発表したのである。
それに伴いコラムのタイトルも「【謎の新店】新宿に“D”現る」から改題した。
入会金は5000円で今月30日まで無料とのことである。
"D"の物語
それは師走に差し掛かり、2つの“O”を巡る新宿の物語がひと段落した矢先の出来事であった。
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【リニューアル】新宿オフホワイトのリブート宣言
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【百人町の“O”】ウベアの半年と台湾カステラ
“O”に続く新たな啓示が、夜の街の神よりもたらされたのだ。
詳細は不明であるが、新宿に新しいお店がオープンしたのである。
“O”に次ぐ啓示、4番目のラテン文字、そして12月1日、新宿に誕生した新しい出会いの場——
それが“D”だ。
話は大幅に逸れるが、柄谷行人1日本の哲学者、文学者、文芸批評家である。本名は柄谷 善男(よしお)。筆名は夏目漱石の小説『行人』に因む、と一般にいわれるが、本人は否定。「kojin」という語感と響きから偶然に思いついたという。(Wikipedia)という哲学者がいる。
35歳の若さにして台湾でデジタル担当大臣を務めたオードリー・タン2中華民国の政治家、プログラマー。改名しており旧名は唐 宗漢(とう そうかん、タン・ツォンハン、英: Autrijus Tang)。(Wikipedia)や、イェール大学助教の成田悠輔3日本の経済学者、起業家、論客。イェール大学助教(Assistant Professor)、一橋大学特任准教授、東京大学招聘研究員、半熟仮想株式会社代表取締役。専門はデータ・アルゴリズム・数学・ポエムを使ったビジネスと、公共政策の想像とデザイン。(Wikipedia)が私淑している人物だ。
柄谷行人はカール・マルクス4ドイツの社会主義思想家,マルクス主義の創始者。ルクセンブルクとの国境近くのトリーアの,弁護士を父とするユダヤ系の家庭に生まれる。青年時代は詩,戯曲,小説などを書く。特にのちに妻となるイェニー・フォン・ヴェストファーレンのため3冊の手帳に書いた愛の詩は,全集にも収められ,邦訳されている。(デジタル版 集英社世界文学大事典)が提唱した「生産様式」5人間はその生存に必要な財貨を社会発展のそれぞれの段階にふさわしい仕方で生産する。生産様式というのはこのような財貨を獲得する仕方をさすものであって、マルクス経済学の基本的カテゴリーの一つである。(日本百科全書)に代わる「交換様式」という概念で世界の構造を分析する。
そして、これまで世界を支配してきた、呪力(A)、権力(B)、資本(C)に対抗する新たな概念として、交換様式"D”を提唱しているのである。
ちょうど、交換様式"D"を巡る論証をまとめた著作が上梓されたところだ。
偶然ではあるが、本コラムも“D”の探求がテーマとなる。
もっとも、交換様式という概念を用いて世界の構造を解き明かそうというのではない。
そのような高尚な思索は私の手には余る。
本コラムの対象は”D Bar”という新しいお店だ。
"D"を巡って
突如として歌舞伎町に現れた"D"というバーについての考察が本節の目的である。
まずは、Twitterのプロフィールを確認してみよう。
ハッシュタグとして以下のものが列挙されていることに気づく。
- #新宿
- #歌舞伎町
- #新宿D
- #BAR
- #出会い
- #猥談
- #マッチング
- #コスプレ
- #フェテッシュ
- #シークレットバー
- #ノンハプバー
- #ハプバー
ハプバーとノンハプバーが併記されており、これだけでは業態を特定することは困難である。
つづいて、Webサイトに目を移し、料金を調べてみると、男性の週末料金が10,000円(女性同伴で2,000円オフ)、女性が1,000円と記載されている。

仮にハプニングバーであるとすれば、安めの価格設定であるし、いわゆる界隈バーやフェティッシュバーと呼ばれるものの相場を考えた場合、飲み放題や歌舞伎町という土地柄を考えても割高であるように感じられる。
実際に執筆時点での、ノンハプバーもぐらの男性週末料金は飲み放題で5,000円である。
もっとも、オープニングの価格であり、正規の料金はもう少し高い可能性もある。
また、詳細は明らかにされていないが、プレミアムプランという料金体系も用意されているようである。
Webサイトでは、店内の写真を伺うことができるが、一般的なバーと同じサイズ感である印象を受ける。ソファーがメインであり、落ち着いた雰囲気の小箱をイメージさせる。
「マッチングルーム」という記載があるが、店内写真から推測すると、おそらくカーテンで仕切られて、二人掛けのソファが設置されているのではないだろうか。
また会員制ではないようだが、入店時に身分証明書の提示が必要であるのも特徴のひとつだろう。
最後に気になる点は、店舗の所在だ。
「東京都新宿区歌舞伎町一丁目」と記載があるだけで、具体的な住所は非公開で、Webサイトには「新宿駅東口出口を歌舞伎町方面、歌舞伎町入口すぐですのでお電話ください。」と案内がある。
住所を公開しないあたりは、普通のバーにはないアンダーグラウンドな雰囲気を感じさせる。
アンダーグラウンドへの扉
前節では現在公開されている情報から可能な限り、Dの考察を行った。
TwitterやWebサイトのアップデートがあれば、店の詳細は明らかになっていくに違いない。
もっとも情報がない状態で来店するのも、この手の遊びの醍醐味であるとも言えるだろう。
ところで、"D"は4番目のラテン文字であると同時にギリシャ文字ではΔ(デルタ)を示すものだ。
起源はフェニキア文字の「ダレト」6WordPressの制約上、字形を表示できないが、ギリシャ文字のΔに似た形である。という文字であり、それは扉を意味するのである。
アンダーグラウンドの扉は開かれたばかりであり、その先の風景はまだ分からない。
新しい情報を入手する機会があれば、コラムでも引き続き、同店を取り上げていきたい。
【了】
【更新履歴】
2022/12/03公開