追記(2022/11/14)

11月13日付で当面の休業が発表された。わたしが懸念していたとおり、「普通のハプバー」の営業戦略が難しくなってきたことを感じさせる出来事だ。早期の再開を期待したい。
オープン前の店名変更
秋葉原ラブステージがラブソングに店名を変えて、7月1日にオープンする。
元々は、ラブステージという店名で6月10日にプレオープンし、開店準備期間を経て、

6月24日にオープンしていたものと考えられていた。
しかし、前々回イベントはプレプレオープン、前回イベントはプレオープンであり、6月30日にラブソングという店名でオープンするのが実際のところのようだ。
ラブソングはハプバーなのか?
ハプバーのオープンについては、公式発表より前に具体的な情報を入手することが多い。
既存店のオーナー、スタッフ、常連客が出店することが多いため、人間関係の繋がりによって、事前に情報が流出するからである。
比較的最近の店舗で、事前情報を掴めなかったのは、短期間でクローズした目黒bar99(2020年8月1日〜2021年9月30日)くらいである。
目黒bar99の情報を入手できなかったのは、ハプバーとは関係のない飲食グループが経営する独立店で、関係者が周囲にいなかったからだ。
もっとも早期に撤退したことにより、未経験でのハプバー経営の難しさを印象付ける結果となった。後述するが、ハプバー経営はノウハウの固まりである。

話は逸れたが、ラブソングについては、事前情報の乏しさゆえ、ひとつの疑問が生じていた。
「ラブソングはハプバーなのか?」
私はハプバーであると判断している。
個室とシャワーが完備されていることがホームページに明記されているからだ。

加えて、料金体系もハプバーのそれである。(カップル料金も存在する)

これらを踏まえると、ラブソングはハプバーであると結論づけてもよいだろう。
「普通のハプバー」は生き残れるか?
私の印象としては、ラブソングは従来通りの「普通のハプバー」である。
料金設定が立地を考慮した妥当な水準であること、ホームページに店内写真がなく雰囲気を想像し難いこと、住所を公開していないこと、SNSでの情報発信を控えていることなど、昔ながらのアングラの流儀に則ったものであるからだ。
華やかさに欠け、近寄りがたい雰囲気であるが、それがアングラであり、「普通のハプバー」だ。
しかし、最近できた新店の趣きは、「普通のハプバー」とは大きく異なるものだ。
新宿オフホワイトや大久保ウベアのように、住所を公開するのはもちろんのこと、ホームページに積極的に店内写真を掲載したり、
-
-
【新宿2つの“O”】OuveaとOff-Whiteについて
-
-
【新宿2つの”O”】ハプバーの新しいセキュリティ戦略
ハーネス東京のように、内装にこだわり抜き、女性の入場料を設定する店もあるからだ。
-
-
【神は細部に宿る】鴨葱ラーメンとハーネス東京
このようなハプバーは従来の常識では考えられなかった。
それはハプバーが増えたことにより、他店との差別化を図るため、何らかの特徴を出す必要に迫られた結果である。
「普通のハプバー」の集客方法
それでは、従来のハプバーはオープン当初、どのように集客していたのだろうか?
実はハプバーの経営が安定するといわれる、1年〜2年の間は、ひたすら単女を呼び込むという、力技の営業を続けていたのである。
具体的には、単女が来店した場合、通ってもらうように丁寧に接客し、場合によっては、LINEの連絡先などを交換し、来店勧誘を続けるという地道な努力の積み重ねで成り立っていたのだ。
そのようにして、いわゆる「遊ぶ単女」が安定的に店に居付く状態を作り、質の良い単男に単女を効率的に配分することにオープン当初はリソースを割いていたのだ。
そして、それなりのレベルの単男が定期的に来店し、界隈での評価が高くなって、来客が増えて経営が軌道に乗るまでには、2年はかかると言われていたのである。
すでに他店で遊べる単男がわざわざ単女のいない新店に移ってくることは少ないため、ハプバー界隈のパワーバランスが変化するのを待ちつつ、少しづつ集客力を獲得するしかなかったのだ。
つまり、アングラ遊びとしてのハプバーが、あまり情報を外に出さずに集客できるのは、2年間にわたって営業を継続出来るだけの充分な資本力と、店長やスタッフの個人的な力量によるものであったのだ、
このことを踏まえると、従来スタイルのハプバーであるラブソングも、そのような集客をする他ないと考えられる。
女性課金時代の到来
しかし、そのような集客方法は今も有効なのであろうか?
「厳しくなりつつある」というのが、私なりの考察である。
それは女性も遊びに課金する時代になり、無料というだではなく、女性が自分の意思で楽しめるお店でなければ集客できない時代が到来したからである。
私はそれを『女性上位時代』というイタリア映画に準えて、「女性課金時代」と呼ぶことにした。
女性上位時代
『女性上位時代』(じょせいじょういじだい、イタリア語: La Matriarca, 「女性リーダー」の意)は、1967年(昭和42年)製作・公開、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ監督のイタリア映画である[1][2]。英語題名はThe Libertine, あるいは The Matriarchとしても知られるイタリア式コメディの1作である[1][2]。あらすじ
20歳で夫フランコ(マリオ・エルピキーニ)が亡くなり、未亡人になったミミ(カトリーヌ・スパーク)は、夫が生前に、特異な欲望のために秘密の一室をもっていたことを知り、自分のためにその部屋を使うことを決意する。夫が密かにたのしんだサディズムとマゾヒズムの世界を経験すべく、分厚い専門書を買い込み、亡夫の親友で弁護士のサンドロ・マルディーニ(ジジ・プロイエッティ)や、親友クラウディア(ファビエンヌ・ダリ)の夫ファブリツィオ(レンツォ・モンタニャーニ)やテニス講師(フィリップ・ルロワ)、生真面目な歯科医(フランク・ヴォルフ)らを夫の隠し部屋につれこむ。ミミの母(ノラ・リッチ)は心配し、精神分析を受けることを勧める。大学病院に行ったミミは、そこで放射線科医カルロ・デ・マルキ(ジャン=ルイ・トランティニャン)に出逢う。学生と偽って講義にも出席、やがて例の部屋にも誘うことになる。最終的にはふたりは結婚し、ミミは念願であった「女性上位」を実現、馬になったカルロにまたがり、新居をたのしく歩き回るのであった。
(最終更新 2022年3月20日 (日) 14:37 『ウィキペディア日本語版』
なぜそのように考えられるのか?
当然のことながら、時代の流れにより、消費者としての男女格差が是正されてきたことが背景にある。
そのことにより、自分の意思で主体的に楽しむために、女性も積極的に遊びにお金を使うようになったからだ。
これは女風が一般化しつつあり、メンズコンカフエなどが流行っている状況を考えれば理解できるだろう。
具体的な事例を紹介しよう。
オルカグループ傘下のメンズコンカフェ、ブラックキャットは好評のようである。
-
-
【店舗分析】orcaグループの歴史と、圧倒的な「攻め」の経営
さらに同グループ傘下の女風サービス、Suisei も着実に知名度を伸ばしつつあるようだ。
このように、従来のホストクラブのようなものではなく、女性が自分のお金で楽しめる、さまざまな形態のお店やサービスが増えている。
コラムではあまり取り上げていないが、ハプバー関係者が経営する、いわゆる「界隈バー」についても、当初はハプバーに通っていた女性がお金を払って来店するのかどうか、懸念する声が大きかったのである。
詳しい説明は省くが、現実には界隈バーブームのような状況になり、どの店も賑わっている。
ハプバーに通っている女性も界隈バーに来店するし、ハプバーと関係のない魅力的なお客も、男女を問わずに多い。
女性も自分が楽しめる場所に自分のお金で遊びにいく時代なのだ。
ハーネス東京というゲームチェンジャー
女性課金時代の波は、ハプバー業界にも押し寄せた。ハーネス東京というゲームチェンジャーの登場がそれである。
当初、ハーネス東京が女性料金を有料化することについて、私は懐疑的であり、記念すべき第1回目のコラムはそのことをテーマにした。
-
-
【店舗分析】女性有料化の上野新店、ハーネス東京はゲームチェンジャーになるか
しかし、オープン1ヶ月程度で、自分の見立てが誤りであることを認めざるを得ず、続編となるコラムでは、そのことをメインに取り上げたのである。
-
-
【店舗分析】女性有料でも好調なハーネス東京のヒミツ
今年オープンしたハプバーでもっとも話題性が高く、集客力があるのは、ハーネス東京に間違いないだろう。
女性有料化によってゲームのルールを変えたのである。
「女性課金時代」のハプバー淘汰
新店ラブソングの話題から論旨が大きく逸れてしまったが、ハーネス東京のように、お金を払う必要のある店に通う女性は、容姿以前の問題として、立ち振る舞いのレベルから魅力的であると感じた。
魅力的な女性客をめぐって、男性客も競い合うことで、店のレベルも向上するだろう。
女性課金のメリットはそれだけではない。
女性から課金することで、売上に対する貢献度の高い一部の常連が特権化するようなケースも減少するだろう。
特権化した常連の横暴は、生行為の温床になり得ると論じたばかりである。
-
-
【徹底分析】なぜ常連の「生」行為はなくならないのか
それだけではない。
女性も入場料が設定されているのであれば、「遊ばなければならない」と女性が変にお店に気を遣うようなことも減少すると思われる。
また好みの男性がいないため、遊ぶ機会に恵まれなかった女性が批判に晒されることもなくなるだろうし、そのような女性が店に冷遇されて、来店できなくなるようなこともなくなるだろう。
さらには、有料の男性がいる手前にもかかわらず、店側も「遊ぶかどうかは女性の自由」であるというような表面的な発言をTwitterで発信することもなくなるに違いない。
(現実的には無料で来店して遊ばない女性だけになれば、男性客もいなくなるので、経営は成立しないのだ)
このような状況で、これからオープンする既存スタイルのハプバーが生き残っていくにはどのようにしたらいいのだろうか?
それはハプバー経営の豊富なスタッフが、今まで以上に地道な努力を続けることによって、ノウハウを積み重ねて、それをひたすら実践するしかないのではないか。
いよいよ本質的なスタッフの力量が試される、ハプバー淘汰の時代になったのである。
その意味でもラブソングは、既存スタイルのハプバーが集客できるかどうか、今後の界隈の動向を占う試金石であると考えている。
【了】
【更新履歴】
2022/06/30公開
2022/09/12新サイトへ転載