勝者も敗者もいない
ノーサイドという言葉がある。
《敵・味方の区別がない意》
1 ラグビーで、試合終了のこと。
デジタル大辞泉
2 (比喩的に)戦いや争いが終わったのち、互いの健闘をたたえ合うこと。また、和解すること。
敵・味方の区別がないことを意味するラグビーの用語である。
特別に「ハプバーワールドカップ」の名前を冠して行われた第4回東京ハプバーランキングも、ノーサイドとなった。
決勝戦の勝者が、優勝の辞退を優勝の公約として掲げていたからである。
公約はもう一つあり、それは「決勝以外のお店で、ハプバーワールドカップの再戦を要求する」というものだった。
後者の公約については、スケジュールの都合で見送られたが、前者の公約は叶えられ、かくして、ハプバーワールドカップの優勝者は不在となったのだ。
「この戦いには勝者もいなければ、敗者もいない。」
それが第4回東京ハプバーランキングで出された結論である。
しかし残されたものは確かにある。
それは数十万のTwitterインプレッションと、数々の激戦を目の当たりにした感動であると、私には思える。
たしかに所詮Twitterでの投票に過ぎないという見方もある。
そのような意見について、私は敢えて肯定したい。
それは現実の人気や実力を数字で表すこと、それ自体が非現実的だからだ。
すでに現実は存在しない。
そうであればこそ、ハプバーワールドカップは、夢と幻の祭りであったと言っていい。
祭りであればこそ、非現実を存分に楽しめばよいのではないだろうか。
数十万のインプレッションはそのような意味を持つ数字である。
二項対立を乗り越えて
ここまで文章を読み進めて、お店の名前が出て来ないことに違和感を持たれた方もいるかもしれない。
なぜ店名が出てこないのか?
それは勝者によって勝敗の無効が宣言されたトーナメントにあっては、勝敗によって劣後をつけて、特定のお店や地域を論じることに、もはや意味がないからである。
もう一度言おう。
「ハプバーワールドカップには勝者も敗者もいない」
そして、こう付け加えたい。
「ハプバーワールドカップは祝祭である」
先述のとおり、今回の東京ハプバーランキングは、「ハプバーワールドカップ」という名を冠して行われた。
それは、直前に行われたFIFAワールドカップの感動を再現したいという、プレゼンターの相葉たつや氏の願いによるものであったと私は想像する。
FIFAワールドカップは感動と興奮が渦巻き、お祭りのような騒ぎであった。
そのような熱狂をSNSを使ってハプバーで巻き起こすのが相葉氏の目的であったように思えるし、その目論みが成功したことは、Twitterのインプレッションを見れば一目瞭然であろう。
もっとも祭りであればこそ、終わった後の寂しさを感じるのも事実だ。
しかし我々にはそれぞれが大切にする場所があるーー
夢の続きを見る現実のお店があるーー
SNSの狂騒などは一過性のものであり、所詮は幻でしかないのだ。
第4回の東京ハプバーランキングは、そのような当たり前のことを我々に教えてくれたような気がする。
そして我々は、しっとり/ワイワイ、新規/常連、大箱/小箱、勝ち/負けなど様々な二項対立を乗り越えて前に進む。
現実世界にこそ、我々が追い求める非現実が存在するのだ。
【了】
【更新履歴】
2022/12/30公開