守護天使のもと、同じ日に生まれる
ハーネス東京は4月1日にオープン1周年を迎える。
以前にも言及したが、偶然にも私が初めてコラムを投稿したのも同じ日である。
そして、そのコラムはハーネス東京について取り扱ったものであったのだ。
コラムを公開するやいなや、オーナーより連絡があり、お店に伺うことになって以降は、
ハーネス東京と並走するかのように、1年にわたってコラムを執筆してきたと、身勝手ながら考えているのである。
インフルエンサーと呼んで差し支えないフォロワー1万人を抱えるアカウントに声がかかるのは当然としても、フォロワー20人程度過ぎない私への誘いは不自然にも思え、ご厚意に甘えてご挨拶に伺おうかどうか逡巡した経験は、今となっては懐かしい。
ところで2022年といえば、コロナ渦の影響がいくぶん落ち着きを見せながらも、依然と先行きが不透明な時期であったと記憶している。
この年は、ハーネス東京の他にいくつものお店がオープンしたものの、翌2023年に春の日を浴びることなく、その数多くが我々の前から姿を消していった。
厳冬に降り積もった雪はあまりにも重かったのである。
「魔の2022年組」
2022年にオープンした店の大半がクローズする状況を象徴的に言い表すため、私はこのように名付けた。
ハーネス東京は、数少ない「魔の2022年組」のサバイバーである。
オープン1周年を迎えるにあたり、オーナーの厳しいディレクションの下、イラストレーターによってイメージがリファインされ、バイオレットと名付けられた守護天使の守りに導かれ、ハーネス東京はこの厳しい1年を生き抜いてきたのである。
パワーストーンとして知られる希少なパープルアゲート(紫瑪瑙)を贅沢に使った、バーカウンターは同店のシンボルであるが、その名前(バイオレット=パーブル=紫)からも明らかなように、パープルアゲートの化身とも言えるような守護天使ヴァイオレットに私も守られてきたような気がするのである。
そうであればこそ、ハーネス東京が無事に1周年を迎えることは、私自身のことであるかのように嬉しい。
今回のコラムはハーネス東京の1年を振り返ることで、僭越ながら私からのお祝いとさせていただきたい。
神は細部に宿る
2002年4月1日、ハーネス東京は上野に誕生した。
オープン前より「内装が豪華である」ということで界隈では評判になっており、その話題に乗じて、私もコラムで取り上げることとしたのである。
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【店舗分析】女性有料化の上野新店、ハーネス東京はゲームチェンジャーになるか
当時のコラムを読み返してみると、いわゆるアンダーグラウンドに属するお店にあって、内装にリソースを投下するというアプローチは斬新であったものの、集客に効果的であるかについては半信半疑だった当時の心象が甦る。加えて、当初は女性も有料であったことから、どのようなお店になるのか全く未知数であった。
しかしながら、オーナー自らが空間をアーキテクトすることで、コミュニティをデザインする手法は画期的であり、それは私の知的好奇心を大いに刺激し、筆を執らせるには十分過ぎるほどであった。
そのような想いのなか、コラムを投稿して間もなく、オーナーから連絡をいただいたのである。
コラム開始とともにTwitteも始めていたが、フォロワー20人程度にもかかわらず、コンタクトがあったことに驚愕したことを今でも鮮烈に覚えている。
来店をお誘いする言葉に戸惑ったのは前述の通りである。
意を決して昼の営業時間にご挨拶に伺うと、今までにはない空間が地下に広がっていることに衝撃を受けるとともに、内装の一つ一つを丁寧に解説するオーナーの熱量に圧倒された。
(紙幅の都合上割愛するが、その解説は、シャンデリアやバーカウンターに始まり、ドリンクサーバーや水回りの設備にも及ぶ)
「神は細部に宿る」
そうして、帰路にふと思い浮かんだ言葉を大切に心に留め、イメージを膨らませながら新たなコラムを執筆したのである。
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【神は細部に宿る】鴨葱ラーメンとハーネス東京
その後のハーネス東京は、ラグジュアリー・フェティッシュ・アイテムのブランドであるリーベ・ゼーレとのコラボレーションでイベントを開催するなど、パブリシティにも力を入れていくようになる。
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【饗宴】ハーネス東京、リーベゼーレとの共同ブランド設立パーティを開催
パブリシティ戦略も奏功し、順調に客足を伸ばしているように思われたが、8月に重要なピボット(方針展開)をする。
女性の料金を無料化したのである。
女性入場料3,000円を無料化し、深夜営業を午前2時から午前5時まで延長したのだ。
ピボットの理由について、前者はリピートを希望する女性増加により負担を軽減するため、後者は平日であっても朝方までの営業を期待する声が高まってきたことに対応するための措置であるという。
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【アップデート発表】ハーネス東京、女性無料化の真意
このシステムアップデート以降、ハーネス東京の知名度は加速度を伴いながら上昇していく。
毎週のスペース配信
女性無料化と平日深夜営業、この2つだけでハーネス東京は人気店への道を歩み出したのだろうか?
決してそうではないと私には思える。
毎週月曜日に配信されるスペース配信が、更なる知名度の向上に拍車をかけたように考えられるからだ。
もっともハーネス東京は、オープン当初より、いや、むしろ事業計画の段階から、SNSマーケティングに注力することを計画していたようにも考えられる。
フォロワー20人程度に過ぎない私のコラムまでチェックしていたのはその証左ではないか。
そのような経緯もあり、Twitterの提供するスペースが話題となったことで、オーナーがホストを務めるスペースを毎週配信するようになったのは自然な流れなのかもしれない。
このスペースには私もゲストとして登壇させていただく機会をいただいた。
コラムの紹介と情報提供のお願いをしたところ、配信終了後から望外の反応があり、SNSの影響力の大きさに驚かされたものである。
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スペース「ハプニング全史」の配信と「全店舗リスト」の公開について
革命としてのグルメイベント
この頃にはSNSマーケティング以外の柱もできる。
それがグルメイベントである。
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【君に、揚げる。】嬉嬉豚とのハプニング
もともとデンマークのビールメーカーとの協賛で、同メーカーのビールサーバーが設置されていたで一般企業とのコラボレーションには実績があり、その経験がグルメイベントにも展開されたとも考えられる。
ハーネス東京のグルメイベントは、既存店のように無料で食事をサービスするようなものではなく、有名店とのコラボレーションで特別なメニューを提供する前代未聞の企画であったのだ。
そのファーストケースは有名とんかつ店とのコラボレーションによる限定メニューの提供であった。
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【ハーネス東京】革命(あるいはカーニバル)としてのグルメイベント
その後もグルメイベントはバージョンアップを重ね、オーナー自らが肉を焼いて提供する恒例イベントが生まれたり、人脈を活かしてミッドタウンなどの有名商業ビルに出店する人気店とのコラボレーション企画が実現することになったのである。
地下のおもてなし空間
洗練された内装、毎週のスペース配信、有名店とのコラボによるグルメイベント——
これだけでハーネス東京は「魔の2022年組」のサバイバーとなったのであろうか?
前節の表現をそのまま引用すれば、決してそうではないと私には思える。
オープン半年を契機に、特定曜日の深夜料金を半額するキャンペーンを始めた他、接客の良さでも注目されるようになってきたのである。
前者について、上野という地域の特性上、夜間人口の少なさをカバーする意図の施策であると考えられる。
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【上野激戦区】深夜半額、ハーネス東京の新戦略
後者については、スタッフの接客に関するアンケートで2位と圧倒的な差を付けてトップになったのである。
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【新基準】おもてなし時代の到来
店舗のアーキテクチャを、ハードウェアとして「コンセプチュアルかつラグジュアリーな内装」、ソフトウェアとして「洗練されたスタッフによるホスピタリティの提供」という2つのレイヤーでとらえ、その両者の適格な実装こそが最上の空間を構成すると、当初よりオーナーが語っていたことを思い出す。
新たなコラボレーターの登場
理想的なハードウェアとソフトウェアを実装した特別な空間、毎週のスペース配信とイベント実施、そして時機を見た各種キャンペーンによるファイン・チューニングなどによって、オープン半年を過ぎたハーネス東京の人気は、ギアチェンジしたかのごとくスピードを上げていくのである。
そして、その勢いに更になるドライブをかけるコラボレーターが登場する。
麻由来のCBD成分を配合するプレミアム・リキュール「CEBEDE」だ。
ハーネス東京はCEBEDEを最初期に取り扱ったアーリーアダプターであり、これまでもCEBEDEとのイベントが企画されてきたが、オープン1周年を目前にして、新プロダクトであるCEBEDEレモネードのリリースレセプションが開催されたのである。
レセプションでCEBEDEレモネードのフリーフローを実施したところ、70名近くを動員し、在庫不足の中で用意した4本のボトルが1時間足らずでなくなるという大反響を引き起こしたことは記憶に新しい。
リクエストに応えるべくセカンドインパクトとして、CEBEDEレモネードのフリーフローイベントと店長のバースデイイベントを共同で開催したところ、一時は男性より女性の来店が多くなるほどの盛況であったという。
ハーネス東京の誇るイケメン店長のバースデイイベント単体で、多数の女性を集客したのであれば嫉妬せざるを得ないが、CEBEDEレモネードのフリーフローも同時に予告されていたということであれば、CCEBEDEレモネードに配合されるCBDのリラクゼーション効果もあって、ジェラシーを抑えて心の平穏を保てるところである。
ともあれ、CEBEDEレモネードは人気のため品薄状態が続いているが、タイミングを見計ってサードインパクトも開催される予定であるという。
CEBEDEについては折を見て別稿で深く取り上げたい。
アンダーグラウンドはレッドオーシャンである
1年にも渡るハーネス東京の軌跡を辿ってみると、まさに試行錯誤の連続であったと感じる。
数々の苦難に立ち向かい、軌道修正をしながら前に進んできたのである。
そしてTwitterで何を発信するか、どのようなイベントを企画するか、企画したイベントの評判はどうであったかなど、営業時間外においても、さまざまな思念が片時も頭の片隅から離れない日々をオーナーやスタッフは過ごしていたようにも想像される。
そこまでにしなければらなないのだろうか?
その答えは私が説明するまでもなく、ご想像のとおりである。
しかしひとつだけ言っておきたい。
アンダーグラウンドはレッドオーシャンである。
界隈難民の救済
災はあなたに臨まず、悩みはあなたの天幕に近づくことはない。
『旧約聖書 詩篇 91篇』
これは主があなたのために天使たちに命じて、あなたの歩むすべての道であなたを守らせられるからである。
旧約聖書の詩篇によれば、神が遣わした天使はすべての人間に救済の光を照らす。
それはアンダーグランドの民にあっても例外ではない。
守護天使バイオレットは、「魔の2022年」で災に遭い祖国を失った難民に救いの手を差し伸べる。
ハーネス東京は、2022年にオープンしたものの、すぐにクローズした店舗の会員に対し、以下のような救済措置を発表したのである。
こうして、界隈を救済する眩い光に包まれながら、ハーネス東京は1周年の祝祭を迎える。
祝祭の3日間
3月8日、1周年アニバーサリーイベントが発表された。
前夜祭(3/31)・本祭(4/1)・後夜祭(4/2)の3日間に渡って、1周年の喜びと奇蹟を分かち合う祝祭が盛大に催されるのである。
混雑を回避するため、入場定数が設けられた他、ディスカウントが適用される事前予約も受け付けているという。
さらに新規会員の入場を制限しているのも特筆すべき点である。
これについては、受付人数を制限したため、いままで共に一つの空間で同じ時間を共有してきた既存会員の入場を優先するための施策であろう。
いずれにせよ、「周年イベントは混雑する」という界隈の常識に一石を投じるアプローチであると言っていい。
このようにハーネス東京の1年間を巡る話題は尽きないが、この辺でそろそろ筆を置き、祝祭の夜のために余白を残しておこうと思う。
ハーネス東京の守護天使バイオレットに永遠の祈りを捧げて——
【了】