追記(2022/11/26)
本コラムの初回公開後、スタッフ立ち合いであったとしても連絡先の交換を許容していない旨のポリシーが、ウベアによりTwitterで投稿された。
趣旨がより明確になるよう本文の該当箇所も修正させていただいた次第である。
スタッフ経由での連絡先交換の容認
はしていません。
— Ouvea店長(は) 2022.6 (@Staff02h) November 25, 2022
周知されているはずのルールを改めて表明するという異例の対応であるように思う。
もっとも、連絡先交換禁止が同店にとって、最も重要なポリシーであることの表れであるとも言える。
ここまで踏み込んでは発言していないが、Twitterで繋がる行為についてもおそらく禁止されているのではないだろうか。
当該Twitter投稿に対する「いいね」もあり、このような毅然とした姿勢は一定の支持を受けているものと考察できよう。
SNSの普及により連絡先交換禁止は有名無実化した感もあるが、各店の対応はおよそ以下のように分かれているようだ。
- スタッフ立会いでのみ、連絡先交換を認容
- Twitterでの繋がりは黙認、トラブル時に対応
- Twitterでの繋がりも禁止
どのようなポリシーの店を選ぶかは、ユーザーの判断であり、ポストハプバー時代にあっては、もはや甲乙をつけるべき事柄ではないと、私は考えている。
重要なことはポリシーを表明することである。
その意味において、今回のウベアのTwitter投稿には重要な意義が認められるのではないか。
天国にいちばん近い島
ウベアがオープン半年記念のイベントを開催する。
以前コラムで新宿2つの“O”のうち、ウベアを百人町の“O”として同店を取り上げてからおよそ半年が経過したということだ。
オープン半年という記念すべきタイミングでもあるので、同店についてコラムで取り上げてみたいと思う。
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【新宿2つの“O”】OuveaとOff-Whiteについて
まずウベアについて特筆すべき点は、店の所在地である。
新宿区でありながら、歌舞伎町の喧騒から離れた大久保に店を構えているのである。
ところで、ウベアは、ニューカレドニアのロイヤルティ諸島に位置する島の名前で、映画『天国にいちばん近い島』の舞台として有名だ。
大久保にあるウベアも、ウベア島をイメージし、アンダーグラウンドの楽園のような店を目指しているのだろう。

そして、ウベアは店でありながら、島のようであるように私には思えるのである。
ハプニングバーのメッカいうべき歌舞伎町から離れることで、外部の影響を受けずに、島のように独立性を保っているからだ。
昨今のハプニングバーを巡る環境の変化に対して、私は「ポストハプバー」という概念を提起することで状況の説明に努めてきた。
ウベアを除くいくつかの店でもこの状況に対応すべく
- Twitterを駆使したSNSマーケティングの強化
- インフルエンサーとのコラボイベントの展開
- スタッフ経由での連絡先交換の容認
- 豪華なフードイベント
- 前日来店予告でのキャッシュバック特典
などさまざまな施策を打ち出してきたのである。
しかし、ウベアはそのような時代の潮流からは徹底して距離を置く。
ニューカレドニア、グランドテール島の東に浮かぶサンゴ礁に囲まれた島のようにである。
台湾とウベア島
店内では台湾カステラというお菓子が売り出されている。
好評のようであり、入荷してもすぐに売り切れてしまうようだ。
なぜハプニングバーでスイーツを、それも台湾カステラを販売しているのかは分からないが、入荷待ちの人気スイーツを食べるというような小さな出来事が、不思議な懐かしさと安心感を私に与えるのである。
話題は移るが、かつて台湾島は、ポルトガル語で「麗しの島」を意味するフォルモサという名前でも知られていた。
そして中国本土の実権を中国共産党が握り、中華民国が中央政府をこの島に移転したことから、中華民国が今のように台湾と呼ばれるようになったのである。
このような事実に、私はウベアというお店と台湾の間に奇妙な一致をみる。
それは両者が美しい島であるという点と、メインストリームから逃れ、独自のカルチャーを保守しようとするスタンスを持っている点だ。
考えすぎかもしれないが、ウベアの台湾カステラは、私にとってはそのような特別な意味を持つのである。
台湾の国立故宮博物院には中国本土の貴重な美術品が所蔵されている。中華民国が中央政府を中国本土から台湾へ移転する際にこれらを運び出したからである。
だから台湾は、本土からは離れているものの、中国の貴重な歴史を引き継いでいると言える。
ハプニングバーの歴史は歌舞伎町で2000年から始まったが、歌舞伎町から離れて2022年に大久保に店を構えたウベアは、その精神を受け継いで守り抜こうとしているように思える。
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【ハプバー考古学#03】Le Grand Bleu 〜深く潜る
私はそのような店が永く続くことを願ってやまない。
我々の楽園は天国ではなく地下にある——
【了】