追記(2023/11/02)
報道で承知のとおり、カレー屋の二階から、われわれの愛したアンダーグラウンド空間は消滅した。
こうしてコラムを大幅に改稿1タイトルを『【新宿の謝肉祭】九二五九は二九五九か』から変更し、アイキャッチ画像も差し替えているして追悼文を捧げることしか、今となっては何もできないのである。
今回のコラムは、渋谷ロシナンテに続く、もう一つのレクイエムとなる。
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【追悼文】渋谷ロシナンテのクローズについて
九二五九は2010年に新宿にオープンした、いわゆる「わいわい系」の老舗として知られる名店であった。
コロナ渦以降、かつての勢いは衰えていたものの、全盛期にあっては渋谷SBと同等レベルの集客力を誇っていたのである。
一時期の界隈においては、渋谷SBと並んで「わいわい系」の2強というポジションであったと認識している。
そして、渋谷SBと同じく、ルールが厳しい店として有名であった。それは秩序が保たれたカオス空間を作る出すための方策であったように思う。しかし、スタッフがお客に厳しい以上に、スタッフはスタッフに対しても厳しく対応していたのだ。
そのような緊張感のなかで、偶発性に満ち溢れた、あの祝祭が成立していたのである。
「10辛のアンダーグラウンド」といえるような刺激に身を委ね、現実に存在する非日常を体験していたのだ。
10辛のアンダーグラウンド――
そう形容できるような厳しさと同時に、われわれは無制限の自由を享受していた。
九二五九が伝説となった今、もはやアンダーグラウンドには、お子様向けに甘口を出すカレー屋しか残されていないのだろうか。
アンダーグラウンドの遊びは、どことなく無理をして辛口のカレーを食べるような、そんな冒険であったはずだ。
そのようなことをふと考えながら、いつもより少しだけ辛いカレーを食べたのであった。
今までお店を支えてきたスタッフの方々、本当にお疲れ様でした。【了】
終焉について
昨夜土曜日、界隈の一部では新宿九二五九に関する情報が駆け巡り、ハロウィンイベント開催で盛り上がっているにも関わらず、店内にも衝撃が走ったことだろう。
ブリスアウトに続き、新宿でアンダーグラウンドの灯がまた一つ消えたのである。
渋谷SBの時とは対称的に、いまだに何の発表もないが、Webサイトはアクセス不能となっており、現実はXで伝わっている憶測のとおりであろう。
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【ハプバー摘発の歴史】おでんくん、SB摘発を間一髪で逃れる
時代の流れとして言いようがないというのが、率直なところである。
もっともどのお店にもライフスタイルはある。
九二五九の絶頂期を記憶している人も少なくないはずだ。
同店は時代の流れに抗うことなく、半ば自覚的に終戦を迎えたと考えるのは、私だけではないだろう。
アンダーグラウンドとして与えられた役割を全うし、新宿五丁目にその記憶を引き継ぐ貴重なお店を残したのだ。
それで満足ではないだろうか。もはやSBやロシナンテのときのような寂寥はないのである。
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【美女と野獣】新宿5丁目の合法ハプニング
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【美女と野獣】新宿5丁目の赤い部屋
「儚い」からこそのアンダーグラウンド――
同感してくれる人がいることを、切に願う。
カレー屋さんの二階
ここのところ、ブリスアウト(11/20)、美女と野獣(11/22)、オフホワイト(11/24)、ウベア(11/24)と新宿区に所在する店舗を立て続けに紹介しており、どのコラムも大変好評をいただいている。
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【アングラ建築論】ブリスアウトの移転について
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【到底納得できない】新宿5丁目のブレイキングダウン
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【リニューアル】新宿オフホワイトのリブート宣言
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【百人町の“O”】ウベアの半年と台湾カステラ
いままで錦糸町や上野の店舗を取り上げ機会が多かったせいか、これら新宿店舗をテーマにした記事のPVを多さに戸惑っているというのが正直なところである。
じっさい原稿執筆時点では、人気記事のランキングは半数が新宿のお店に関するコラムとなっている。やはり新宿は錦糸町や上野とは、スケールが違うということを再認識した次第だ。
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【錦糸町】変態バーから大箱SMバーまでの20年史
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【秘史解禁】上野のアングラ全史
以上の経緯を踏まえ、新宿店舗に対する反響に大きさに応えるべく、今回は九二五九をテーマとして取り扱いたい。
同店は2010年に大久保(住所はWeb公開済み)にオープンし、開業10年を超える名店である。

同店の所在地は新宿区の大久保である。住所こそ大久保ではあるが、大久保駅から近いわけではない。
最寄り駅は地下鉄の東新宿駅(都営大江戸線、メトロ副都心線)である。
歌舞伎町二丁目から外れて、職安通りを渡った場所にあるため、歌舞伎町の喧騒から離れたやや落ち着いた雰囲気である。
地下鉄の出入り口からほど近く、CoCo壱番屋のあるビルの2階に入居していると書けば、周辺環境は把握いただけると思う。

同店が入居する前は、ドリームという逆ナンパ喫茶が営業していたようである。
別の機会に解説したいが、90年代より逆ナンパ喫茶という業態が存在し、ドリームという店が1995年から2001年まで浅草にあり、同年、新宿一丁目に移転して2004年まで営業した後、2010年(あるいは2009年)までは、現在の九二五九の建物に入居していたのである。
美女と野獣の系譜
以前、美女と野獣のマスターが、九二五九の店長を務めており、同時期に上野パピヨンの店長がスタッフとして働いていたのである。
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【愛妻家】パピヨン阿部店長はハプバーの未来を見据える
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【師弟コンビ復活】界隈の全ては義理と人情で出来ている(SNSの全ては嘘と損得で出来ている)
Twitterでの投稿でもはっきりとは名言していないので、コラムに書くべきかどうか逡巡していたところではあるが、来店のきっかけにつながればと思い、コラムでも話題として触れることにした。
その意味において、九二五九は美女と野獣の系譜にあり、パピヨンもその影響下にあると考えてよいだろう。
コロナ渦以降は大人しくなった感のある同店であるが、長い歴史を持つ新宿の名店であることには違いない。
今後の動向が注目されるところだ。【了】
【更新履歴】
2022/11/28公開
2023/11/02追記