【店舗分析】orcaグループの歴史と、圧倒的な「攻め」の経営

2022-05-05

本コラムを初回公開後に、orcaグループのスタッフの方々から、コメントをいただいたのを受けて、一部内容を修正し、文末には補論を追加させていただいた。

アンダーグラウンドの現在地を探る(2023/10/07)

ビジネスの世界で、「カバレッジ」という概念がある。投資のために、企業を分析の対象とすることや、分析対象の企業そのものを指す言葉だ。

コラム公開当初、ORCAグループはカバレッジ対象であったが、その後、錦糸町ノーダウトや新宿クリプトを閉店し、所謂、典型的なアングラビジネスから撤退したことや、コンセプトカフェなどに業容を拡大したことから、コラムのコンセプトとは相容れないと考え、カバレッジから外していたのである。

しかしここに来て、ORCAグループを再びカバレッジせざるを得ない出来事が発生した。

今回コラムの追記として取り上げる、渋谷ジャバウォックのオープンがそれである。

ジャバウォックは、「アングラ出会いバー」を標榜し、渋谷のラブホ街のど真ん中にオープンした、ORCAグループの新店だ。店内はバーカウンターのみで男女が向かい合うようにして座り、コミュニケーションを取るBAR形態の店である。

所在地のみならず、料金システムも魅力的であり、女性は無料、男性は平日五千円、週末七千円という破格である。

更にアングラ歴の長いスタッフが運営に携わっているので、これだけの条件が整えば、上手くいかない筈はないというのが正直な所感だ。

偶然の一致かもしれないが、オープンのタイミングも絶妙な時期であり、結果として、渋谷ジャバウォックはアンダーグラウンドの現在地を示すような存在になっている。

具体的には、9月末に新宿ブリスアウトが12年の歴史に突然幕を下ろした。さらに同タイミングで、歌舞伎町で曜日限定の営業を行っていた、BAR244も短期間でクローズしている。

それだけではない、イーロンマスクによって、Xへと改名した、かつてのTwitterは、全面的な有料化の噂が絶えない状況になっている。

つまり、(上記2店クローズの原因は定かではないが)リーガルを考えれば、かつてのアングラ形態での営業は現実的ではなく、そうかといって、無料SNSを背景にした「裏垢勢」頼みのマーケティングも将来性が見込めないという状況下で、渋谷ジャバウォックはオープンしたのである。

しかし、このような状況を見越していたかのように、ジャバウォックはSNSに依存せずとも集客の見込める、深夜も人通りの多い渋谷に出店。SNS偏重のプロモーションからは若干距離を置くとともに、ORCAグループとしては珍しくWebサイトも設置している。さらにリーガルもクリアし、かつてのアングラ店とは異なった店舗構成となっている。

議論の余地はあるかもしれないが、これがZ世代までをも射程に据えた最新形のアンダーグラウンドなのだろう。

ここのところのアンダーグラウンドは、再定義を余儀なくされる状況が続いている。ほんの数年前には、ジャバウォックのすぐ近くにSBがあり、週末となれば100人を優に超える人で賑わっていたことを、われわれは忘れてはならない。

状況が変わっても「アンダーグラウンド」という言葉のもつ魅力は衰えることはない。

ジャバウォックの盛況を見て、「アンダーグラウンドの現在地」という言葉がふと頭に過ったのである。【了】

追記(2022/11/16)

2022年はorcaグループにとって大躍進と大転換の年になった。それは界隈の動向そのものを象徴しているかのようだ。

今回は今年のorcaの足跡を辿るとともに、界隈の近況についてもコラムを追加することでお届けしたい。

まずはバー事業を拡大してきたので予想できたことではあるが、orcaはピボット(事業転換)を行った。ハプニングバー事業から完全に撤退したのである。

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その上で店名を残し、見事にバー業態に転換させたのである。

それ以外にも、この追記を執筆した前日にはKTBという新しいバーを歌舞伎町にオープン。

その1ヶ月前にも、K‘sBARというバー店舗を同じ歌舞伎町に開いている。

https://twitter.com/Ks__Bar/status/1581206878302113793

コンカフェ事業も拡大しているようである。

https://twitter.com/BLACKCATCAFE222/status/1587325317190160384

思うにorcaは新しいポストハプバーとでもいうべき、新しい時代を見据えつつも、その道を歩むことはしなかったように思える。

ツイートはそのことに示唆的である。

代わり新しい時代のバーを模索したのではないか。

それは、Twitterを駆使することで、歌舞伎町のバーというやや敷居の高い場所に、SNSネイティブのZ世代を呼び込む画期的な戦略であったかのように思う。

歌舞伎町エリアに集中的に出店し、Twitterをベースにして、店舗間や、スタッフとお客の垣根をフラットにするような新しい時代の試みだ。

それはスタッフがグループ内外の店にも顔を出しつつ、お客さんもその跡を追うかのように店をハシゴする。
あるいは他店のスタッフがグループのスタッフになったり、常連のお客さんがスタッフになったりという具合だ。

Twitterでのコミュニティをバックバーンに、あたかも歌舞伎町そのものが一つのお店であるかのような印象を受ける。

新しい時代の新しいコミュニティだ。

来年のorcaがどのように展開するのか私には見当がつかない。もしかしたら原点に回帰するのではないかと予想するのは、私自身の希望的観測であろうか。

ともあれ、今後もorcaの更なる躍進に期待したい。

孫子の兵法とorca

【追記 2022/05/26】ハプバーとしてのクリプトが5月末に閉店することが発表されたため、関連する内容を修正した。

冒頭より、「攻撃は最大の防御なり」の出典として知られる、『孫子の兵法』の一節を引用させていただいた。アングラ業界において、この孫子の教えを体現する企業がある。
その企業は、今回のコラムで取り上げるorcaグループ(以下、「orca」)に他ならない。なぜそのように言えるのだろうか。今回のコラムはorcaについて、具体的な事例を挙げて解説していこうと思う。

それはGWが始まったばかりのことである。orcaを象徴するような出来事が起こった。GW前半戦の5月1日にorcaグループのクリプトがGW中の入場料を5,000円にすると当然発表したのである。
以前にもコラムで書いたように、GWは男女とも常連が敬遠する傾向にあり、遊ぶことのみを目的として行くのはお勧めできないのだ。

一方でハプバー自体を楽しみに行くのであれば、渋谷SBのような全国的に知名度の高い大型店は有利であるのはコラムに書いたとおりである。つまり、GWを商機と捉えるかどうかは店の営業形態に依存するということなのだ。

それを踏まえると、大型店ではないクリプトはGWの営業を有利とする営業形態ではないと一般的には考えられる。事実、GWは何のキャンペーンもせずに静観するお店も多い。GWに関しては、大型店以外は守りに入るという言い方が分かりやすいだろう。

しかし、そのような状況を商機に変えてしまうのが、orcaである。冒頭で申し上げたように、何の前触れもなく、入場料を破格の5,000円にしてしまったのだ。大胆な判断は奏功し、掲示板の書き込みを見る限りは集客に成功しているようだ。

その波及効果は、本コラムでもお馴染みのノーセックスあらたさんのツイートを見ても顕著である。タイミング如何によっては、orcaにもノーセックス文化が進出していたのである。

このような攻めの経営は出店計画にも現れる。順番は前後するが、実店舗の出店を時系列で振り返ることで、orcaの歴史について概説していきたい。

まずは2017年5月2日に錦糸町でハプバーのノーダウトをオープンする。当然であるが、このタイミングではグループとしてのorcaは存在せず、単独の店舗である。

続いて、2018年3月15日に新宿でハプバーのクリプトがオープンする。

それ以降はハプバー以外の業態にも進出し、orcaはグループとして、まさに破竹の勢いを呈する。

2020年10月1日に新宿にバーとしてエグリーズをオープン。

2021年1月3日にバーとして錦糸町にBAR 4をオープン。

https://twitter.com/BAR_yon_/status/1345326453194309632?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1345326453194309632%7Ctwgr%5E614c0b773a7567733618c18e6d54364de9025df4%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Ftips.jp%2Fu%2Fhap-gachi%2Fa%2Fz0pkW7jD

2021年6月15日に新宿にバーとしてバフォメットをオープン。

2021年10月3日にメンズコンカフェとして池袋にブラックキャットオープン。

2021年10月22日に錦糸町にバーとしてGeekをオープン。

2022年4月1日に新宿にコンカフェとしてホワイトキャットをオープン。

https://twitter.com/Whitecat222__/status/1509826136385069067?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1509826136385069067%7Ctwgr%5E614c0b773a7567733618c18e6d54364de9025df4%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Ftips.jp%2Fu%2Fhap-gachi%2Fa%2Fz0pkW7jD

また、orcaの事業拡大は店舗経営だけに留まらない。内装業や女風サービスにも事業進出しているのである。

そんなorcaが手掛けるビジネスは10事業に到達したというのだ。
一つの事業体としては、驚異的なスピードと成長力である。

まとめると、2022年5月7日現在、orcaが手掛ける事業は以下の通りである。

オープン日 店名/事業名 業態
2017/5/2(2022/7/31閉店) ノーダウト ハプバー
2018/3/15(2022/5/30閉店) クリプト ハプバー
2020/10/1 エグリーズ バー
2021/1/3 BAR 4 バー
2021/6/15 バフォメット バー
2021/10/3 ブラックキャット メンズコンカフェ
2021/10/17 Geek バー
2022/1 内装屋orca 内装業
2022/3/23 Suisen 女風
2022/4/1 ホワイトキャット コンカフェ
2022/6/24 クリプト(モリプト) バー

さらに、orcaの勢いはGW割引や出店ラッシュなどの経営戦略にだけには留まらない。スタッフにもその勢いが波及するのである。

orcaの勢いを最も体現する者…それはBAR 4オーナーのたけ氏において他にはいないだろう。

時にその勢いはシャンパンの泡となって放出される。

そんなたけ氏は5月3日(ゴミの日)に誕生日を迎えた。お祝いの言葉を贈らせていただき、コラムの結びとしたい。

お誕生日おめでとうございます。お身体に気をつけて頑張ってください。

補論

本コラムの公開後にorcaスタッフの方々からコメントをいただいたので、その点を追加するために補論を執筆させていただいた。
まずは、クリプトだけではなく、ノーダウトもGWキャンペーンを行っていたので、今更ではあるが補足させていただきたい。

来店回数に応じた割引をキャンペーンを行っていたのである。

続いて、orcaにはBAR 4オーナーたけ氏以外にも魅力的なスタッフがいるので紹介させていただきたい。

最初に紹介させていただくのは、ノーダウト店長1現在はオーナーのSKK氏である。

時として、SSK氏は「ウイスキーボトル1日1本飲みの行」を修める。
たけ氏の快気祝いや誕生日のためだ。
そして、即身仏になる。合掌...

SSK氏はorcaにおいて釈迦の化身である。
それはSSK氏の額にあるほくろを見れば疑う余地はないだろう
「釈迦が転生したらハプバー店長だった件」ということだ。

次に紹介させていただくのは、バフォメットのよーいち氏である。

よーいち氏は現在、子豚に身をやつしている。
orcaの生贄として天に召されるためだ。
迷える子豚に神のご加護を
アーメン...

https://twitter.com/104orca/status/1461385738772045825?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E1461385738772045825%7Ctwgr%5E614c0b773a7567733618c18e6d54364de9025df4%7Ctwcon%5Es1_c10&ref_url=https%3A%2F%2Ftips.jp%2Fu%2Fhap-gachi%2Fa%2Fz0pkW7jD

彼の生き様を表すセリフを紹介しよう。
「飲まねえ豚はただの豚だ」

本コラムでは、敢えて、たけ氏(orcaの特攻隊長)、SSK 氏(orcaの即身仏)、よーいち氏(orcaの聖豚)の3名しか名前を挙げていない。
それはコラムをお読みいただいた方には、orcaのお店に足を運んでいただくことで、個性豊かなスタッフと出会っていただきたいからである。

最後になるが、orcaの魅力とは何であろうか。
魅力なスタッフもその理由かもしれない。
しかし、私は経営戦略にみられるようなスピードこそがorcaの魅力であると考える。
スピードは危険と常に隣り合わせだ。
思えば、アンダーグラウンドも危険と表裏一体であった。
そのような危険な魅力こそがorcaそのものではないだろうか。
そして、orcaは人々を魅了し続ける、危険とともに…

補論の執筆を終えた本日5月7日は、ノーダウトのオープン5周年イベントの当日である。それはorcaの創業5周年でもあるのだ。
この場を借りて、お祝いの言葉を申し上げさせていただきたい。

ノーダウトのオープン5周年おめでとうございます。

【了】

【更新履歴】
2022/05/04公開
2022/05/26修正
2022/11/16追記

  • 1
    現在はオーナー

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