【何度でも新しく生まれる】新宿ピュアティワンの研究

2023-04-17

もっとも古いお店とは?

「ハプニング全史」という界隈の歴史を辿るコラムを不定期で発表し続けているが、もっともシンプルな疑問に、私たちはまだ回答していない。

それは「現在営業中で、もっとも古いお店はどこか?」という問いかけである。
「新宿ピュアティワン」がその答えであり、今回のコラムのテーマなのだ。

調査の結果、現存する最古のお店は、新宿のピュアティワンであると暫定的な結論に至ったのである。

今回は新宿ピュアティワンを研究するとともに、ここのところ停滞気味であった「ハプニング全史」を大きく補完・修正する内容となるだろう。

まずは「ハプニング全史」の内容を振り返り、その後、新宿ピュアティワンの歴史に概観することで、いまだに明らかになっていない界隈黎明期の様子に光を当ててみたい。

スペース「ハプニング全史」の配信と「全店舗リスト」の公開について

以下の表は、上記コラムよりハプバー誕生前後の店舗一覧を抜粋したものである。

以下のブログを第1次史料として参照し考察すると、はじめて「ハプニングバー」を標榜したグランブルーが誕生したのが2000年。

もともとグランブルーの前身となったお店はオリーブ(現在のオリーブ21とは別)はカップル喫茶であった。
そしてグランブルーは2006年クローズ、オリーブは1990年代の後半には現在のオリーブ21へと変わっている。

一方、同じ時期には、ピュアティ(現在のピュアティワン)がカップル喫茶としてオープン、途中から業態をハプバーへ業態を変更し、店名や場所を変えながら現在も営業を続けているのである。

2000年頃よりオープンし続いているお店は、2002年の藍の森(オーナーが変わり現在は「NEOアジト」)、同じく2002年のクロスシーズン(現在はクロスシーズンIIへ店名変更)同じく2002年オープンのハッピーなど、新宿に数店舗あるものの、1990年代から続いているのはピュアティワンをおいて他にないのである。

もっとも1998年にはマーキス東京がオープンし現在も営業しているが、「ハプニングバー」ではなく「変態バー」を標榜していることから、ここでは例外とすべきであろう。

このような経緯を踏まえれば、ピュアティワンが現在も営業を続ける最古のお店であると結論付けることができるのである。

古くて新しい、新しくて古い

新宿ピュアティワンは老舗である。
ただ単に長く営業を続けているだけかといえば、決してそうではない。

カップル喫茶から業態を変更したり、店名や所在地を変更するだけでなく、料金システムやコンセプトを度々変更しているからである。

最近でも4月15日に内装工事を経てリニューアルオープンを果たしている。

https://twitter.com/suitepure0420/status/1647049561465311232?s=20

リニューアルオープンの前には、返金システムを導入するなど革新的な試みを続けている。

なぜ新宿ピュアティワンはスタイルを大きく変えながらも営業を続けるのだろうか?

それは時代の変化に対応することが理由であるように考えられる。
カップル喫茶から業態を変更したのは顕著な例だろう。

オープン当初からの理念を守り続けるために、新宿ピュアティは営業スタイルを大胆に変化させることで、時代の変化に取り残されることなく、ここまで生き残ってきたのではないだろうか。

とあるCDのタイトルを借用し、コラムの題名に「何度でも新しく生まれる」と付けたのはそれが理由である。

たとえば、時代の流れに寄り添うために、ノンハプバーや界隈バーへと業態を変えたり、カラオケやダーツを設置しアミューズメント路線に転換したり、テキーラなどのショットをフリードリンク化し、お酒が好きな人をターゲットにするなど、ゴールポストの場所を変えることで、営業を続けていくお店が増加する傾向にあると思う。

時代の変化により、本来の目的に対する期待値が低下したため、目的そのものを変更させる手法であり、ゴールポストの位置を変えるような行為である。

しかし、新宿ピュアティワンは、そのようなゴールポストを変えるような行為については、徹底的に否定したきたように考えられるのである。
理念を変えない純粋さを持ち合わせている唯一の店であるからこそ、ピュアティワンなのである。

pu・ri・ty[pjúrti]

n.
1 質を悪く[汚染]するものを含まないこと,清らかさ,清浄

the purity of drinking water

飲み水がきれいであること.

2 混ぜ物[添加物]のないこと,純粋.

『小学館 ランダムハウス英和大辞典』


ゴールポストの位置を変えずに、本来の期待値を維持するために、時代に合わせて、様々な手段を用意してきたのではないだろうか。

直近のリニューアルまで行われていた料金システムはその典型だろう。期待値が下がった分、返金システムを導入したり、価格そのものを下げたり、あるいは、期待値を上げるために、通常料金に対して追加課金する制度を提案していたのである。

リニューアル後はワンデーショップという仕組みを採用し、通常の営業と併せて、営業形態の異なるお店も複数営業する形態となっているようだ。

https://twitter.com/suitepure0420/status/1644168044237967362?s=20

猥談バーのシークレットと

https://twitter.com/waidanbarsecret/status/1646534053305389062?s=20

BAR 244がワンデーショップでの営業形態である。

https://twitter.com/bar__244/status/1641417528361783297?s=20

これまでの歴史を振り返ってみれば、新宿ピュアティワンらしい大胆な方針転換といえるだろう。

老舗の強み

新宿ピュアティワンは機動的な経営戦略の転換だけで生き残っていたのだろうか?

それだけではないというのが私の見解である。

長きにわたる営業を共にしてきたお客さんこそが同店の最大の強みであるように考えられるからだ。
常連のお客さんとマスターが一緒になってお店の雰囲気を作れることが最大の武器なのである。

最近オープンした新しいお店の課題は、スタッフもお客さんさんも界隈の経験が長くないため、ムードを作ることができないことにある。
普通のバーや、深夜のファミリーレストランのような雰囲気になってしまうのであろう。

当然のことながら、そのような場所に、新規客を中心とした見ず知らずの人たちが集まっても、何も起こらないのである。そのためにお客さんが定着せず、次第に集客が衰えて、クローズせざるを得ない状況に追い込まれると推測できるのである。

しかし、新宿ピュアティワンはそのような懸念とは無縁だ。それは形を変えながらも、コアになるコンセプトを変えることなく20年以上も営業を続け、お客さんを育ててきたからに違いない。どんなにお金を出しても買うことはできない雰囲気を、新宿ピュアティワンは多額の無形資産として保有しているように思えてならないのである。

頑張ってもらいたい一心から新しいお店を紹介する機会が多かったが、新宿ピュアティワンのような老舗で、界隈の洗礼を受けてみるのものよいのではないだろうか。

新宿ピュアティワンは、何度でも新しく生まれる――

【了】

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