【会員制ダイニングバー】渋谷ミルフォイユの研究

2023-03-18

ロシナンテ以降にアンダーグラウンドは成立するか(2023/04/04追記)

3月末、渋谷ロシナンテがクローズし、ひとつの歴史が終焉を迎えた。

眠れる森の美女が永遠の眠りについたのである。

【追悼文】渋谷ロシナンテのクローズについて

しかし歴史が終わろうとも世界は残る。
われわれは喪失感を抱えながら、この世界を生きていくしかないのである。

このような状況に呼応するように、眠れる森の美女を失った渋谷に新たな挑戦者が現れた。
渋谷ミルフォイユである。

同店は、週末の深夜営業を開始するとともに、入会金無料・入場料9,000円(週末も含む)というキャンペーンを発表したのだ。

アンダーグラウンドにおける壮大な実験であり、後世に残る貴重なケーススタディであると思う。

それは、渋谷という好立地にあって9,000円という良心的な価格でゼロから集客が成功するかどうか、いいかえれば、アンダーグラウンドのコミュニティが立ち上がるかどうか、最後のチャンスになるからである。

この条件で集客がうまくいかなければ、これ以降に「完全に新規」でこの業態に参入するのはほとんど現実的ではないといってもいいだろう。

「完全に新規」とは、系列店でもなく、店員や有名常連の独立でもない、まったく新規でオープンすることである。
実際に、このような「完全新規店」のほとんどは1年以内にクローズしている。

「完全新規店」での事業継続が困難であることが人口に膾炙したためか、私が以前に伝え聞いていた新規出店計画についても続報が入らなくなってきた。
厳しい状況を目の当たりにして、事業計画を撤回した可能性もあると考えている。

しかしそのような状況にも関わらず、渋谷ミルフォイユは最後の挑戦者として、渋谷という地に立ち上がったように、私には思えるのである。

ところで、なぜ「完全新規店」がうまくいかないのかについて考察したい。
それは端的に言えば、お客さんがファーストユーザーだけなので、アンダーグラウンド特有のお店の空気感を作ることができないからである。
それに加えて、スタッフにも経験やノウハウがないため、もはや普通の飲食店と同様の雰囲気になってしまうのだ。

SNSの普及によって、そのようなお店がそのような状況であることはすぐに拡散されるため、さらにお客さんが集まらなくなり、数少ないファーストユーザーが来店しても、お店に定着しないという負の連鎖に陥ってしまうのである。(通う店を作らずにイベント単位でお店を徘徊したり、人気店に集客が偏在するという状況にある。)

他の業態とは異なり、お客さんを目当てにお客さんが集まるという特殊な構造であるため、一度お客さんがいなくなってしまえば、そこからのリカバリーは極めて難しいため、早期クローズ店が後を絶たないのだ。

それは「魔の2022年組」と私が称した、新宿エンカウントや秋葉原ラブソングがいい例である。

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一方、新宿のスカーレット東京が、お店の雰囲気作りに成功しており、集客が順調であるのは、私の完全な憶測ではあるが、スタッフやオーナーがアンダーグラウンド界隈の住民であり、自身のコミュニティから集客ができるからではないだろうか。

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もう一度言おう。
SNSを世界のすべてを覆いつくすフラットな時代にあって、渋谷ミルフォイユの挑戦は、アンダーグラウンドに新たなコミュニティが成立するかどうかの試金石である。
そうであればこそ、渋谷ミルフォイユは、すべてのアンダーグラウンドユーザーにとって注目に値すべき店なのである。

「ロシナンテ以降にアンダーグラウンドは成立するのか?」

眠れる森の美女はそのようなメッセージを残し、永久の眠りについたのだ。

グランドオープン決定

渋谷ミルフォイユのWebサイトが無事に公開され、

 

併せて、グランドオープンイベントの詳細も発表された。

営業準備期間が長かったことから、オープンを危ぶむ声もあったように思われるが、無事にグランドオープンを迎えたのである。

【渋谷ミルフォイユ】会員制ダイニングバーは食べログに挑戦するのか?

本コラムでは、Webサイトの情報をもとに、渋谷ミルフォイユについて分析し、界隈への影響について検討していきたい。

会員制ダイニングバー

渋谷ミルフォイユは「会員制ダイニングバー」を標榜している点が特徴だ。

実際にメニューが用意されており、中華や洋食を中心にさまざまな料理が提供されるようである。
事前に予約でケーキもオーダーできるのは驚きである。

フランスでの修行経験もあるケーキ職人がオーナーを務めているからこそ実現可能なサービスであろう。

会員制ダイニングバーと呼ぶにふさわしいお店である。

良心的な料金体系

料金は週末夜で1万2千円という戦略的な価格水準である。
渋谷という立地にあって、生ビールありの飲み放題付という点も見逃せないだろう。

新宿にスカーレット東京がオープンし、割引を適用した実質的な週末夜料金を1万3千円(生ビールありの飲み放題付)としてからは、業界内に価格競争の波が押し寄せているのである。

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渋谷ミルフォイユもこのトレンドを意識した料金体系であると考えられる。
3月末閉店の渋谷ロシナンテが入場料(1万6千円)、ルーム代(2千円)、入会金(6千円)であったこと考えるとインパクトは大きい。

【追悼文】渋谷ロシナンテのクローズについて

営業時間について

営業時間については、1部(10:00~18:00)、2部(18:00~24:00)と別れている。
Webサイトで明記はないが、週末については朝方まで営業するものと思われる。

ここで指摘しておきたいのは、午前10時からオープンしている点である。
業界の動向についても研究し、「朝営業」についてもニーズがあると考えているのであろう。

じっさい主婦をターゲットにした朝イベントが人気を博していることから、このセグメントをいかにして取り込むかが今後の課題となろう。

料理やスイーツを提供できるという点は女性を集客するうえでの強みなってくるかもしれない。

界隈への影響

3月でクローズする渋谷ロシナンテと入れ替わるようにしてオープンする渋谷ミルフォイユであるが、時代を反映した店づくりという印象を受ける。

界隈で進行しつつある価格競争を意識した料金体系であることに加えて、ダイニングバーとしてケーキや食事の提供などの付加価値をアピールしているからだ。

今後は、Twitterを駆使していかにWebマーケティングを展開できるかが成功のカギになってくるだろう。

ここのところ、1年未満で早期クローズするお店が目立っているが、同店については継続して営業してもらいたいと願って止まないのである。

手短なコラムとなったが、同店について情報の更新があれば都度取り上げていく予定である。

【了】

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