休業宣言
もう秋葉原から愛の歌は聴こえてこない——
それは今年を総括するコラムを執筆する矢先の出来事だった。
秋葉ラブソングが11月13日付けで、当面の休業を発表したのだ。
わたしの心中は複雑である。
というのも、渋谷の新店舗オープンが今年の締めくくりであると考えていた私にとっては誤算でもあると同時に、以前コラムで予想していた悪い事態が的中してしまったからだ。
もっとも、休業の理由が集客の問題であるのか、スタッフの急な退職などそれ以外の理由にあるのは分からない。
ともあれ、オープン半年で休業に至ったという事実は、界隈に暗い影を落とすことになる。
さらに言えることは、ハプニングバー巡る状況は、それほど苦しいということだ。
旧来の営業戦略
コラムでも書いたが、旧来のハプバーの営業戦略は、まずはスタッフの力量によって、女性を優先的に集客し、時には連絡先を交換するなどして、可能な限り店に繋ぎ止める。その次に実力のある男性客を集め、効率的に女性と引き合わせることで、両者を常連にしつつ、徐々に店の雰囲気を作っていくというスタイルであった。
しかし既存店から実力のある男性が移籍する可能性は低く、店舗間のパワーバランスが変化するの待ちながら慎重に集客を進めるという、まさに砂上の楼閣を築き上げるような繊細な作業に尽力していたのである。
そのような我慢の経営を2年間は強いられるというのが、かつてのハプニングバーの経営であったように思う。
しかしそのような経営スタイルが今も現実的かといえば、もはやそうではないだろう。
短期間での集客を要求されるような経営環境であるように思えるし、そのために従来では考えられなかった営業戦略が必須になっているからである。
- スタッフ経由での連絡先交換の許容範囲
- 接客経験を重視したスタッフ採用
- YouTubeによる店内公開
- SNSでのマーケティング
- インフルエンサーとのコラボイベント
- 豪華食材のフードイベント
実際のところ、このような施作は従来の店舗で想像できなかったものだ。
秋葉原ラブソングといえば、スタッフがコスプレの女性スタッフであるという店を除けば、今までのハプニングバーのそれと何ら変わらなかったように思う。
従来の営業戦略では、ノウハウを駆使した長期戦になるので、目に見える結果を短期間で出すのは厳しかったと言わざるをえない。
秋葉原ラブソングの教訓
秋葉原ラブソングの早期休業は、従来のストラテジーによる営業が困難であるという現実を、我々に突きつけているようだ。
このような状況について、私はポストハプバーという概念を提唱してきた。従来ハプニングバーと呼ばれてきたものは、既に新たな形態に移行しているという意味合いの言葉だ。
新しい時代には、新しい生存戦略が要求される——
11月下旬には渋谷に、およそ10年ぶりの完全な新店舗がオープンする。ポストハプバーの時代に、どのような営業戦略で打って出るのか、今から注目が集まるところだ。【了】
【更新履歴】
2022/11/15公開