偽おでんくん・偽ハップマン

いよいよ偽おでんくんの出現が現実味を帯びてきた。
おでんTシャツを着て、ハプバーに行けば誰であっても、おでんくんを名乗ることができるからだ。

このような状況に、おでんくん自身も警告を発している。
あえて自分からルームに誘わないことで、偽おでんの被害を食い止めようとしているようである。
おでんくんはTwitterだけでなく、ハプバーでも同様の名前であり、おでんTシャツを着ることによって、自分から名乗らなくても、Twitterアカウントの人物であることが判明する。
しかし、Twitterで知名度に比して、おでんくん本人の顔を認識している人は少ない。
つまり、おでんくんTシャツを着てハプバーにいるだけで、本人が意図せずとも、店中の客から、おでんくんであると認識されうる奇妙な非対称性が発生しているのだ。
悪質性はないものの、現に似たような事例はあった。
もぐにん氏が偽あらた氏として、女性とルームに入った一件である。
一方で偽ハップマンがハプバーに現れる可能性は低いと考えられる。
おでんくんとは異なり、ハップマンという名前の使用はTwitterに限定されており、ハプバーでの活動実績はないものと推測できるからだ。
ハプガチ!=ハップマン説
このようにTwitterをきっかけとして、あらゆる場所で偽物(と思われる存在)が発生しているが、Twitterアカウントと本人の同一性(アイデンティティ)を証明することはほとんど不可能に等しい。
現実に、Twitterアカウントと本人の同一性を証明する手段は、法律に基づく情報開示請求しかないであろう。
現に私もハップマンであるとの嫌疑をかけられているが、いまだに反証できていない。Twitter上にはその手立てがないからだ。

以前にもコラムでも記したが、Twitterのアカウントは「幽霊」のように、現実の実体を離れて活動する。
幽霊の存在は本人すら認知できない。
あらた氏は、そのことをツイートで端的に示唆する。
ハプバーの幽霊
私が「幽霊」と表現したものは、デリダのいう「幽霊」という概念に対応するものだ。
この概念については、東浩紀の説明が的確である。
幽霊(revenant)は、ぼくが学生のころに研究した、フランスの思想家ジャック・デリダの主要な概念──というより隠喩──のひとつです。デリダの哲学では、幽霊は「現前と非現前のあいだにあるもの」および「回帰 revenir するもの」という含みをもっています。現実には存在しないはずなのだけれども、頭から離れず執拗に回帰し、結果として現実にも影響を与えてしまう非実在の存在、それが「幽霊」です。
東浩紀『「幽霊的身体を表現する」開催にあたって』
冒頭で引用したマルクスのテクストは、当時のヨーロッパにおける共産主義の受容を示したものであり、デリダの「幽霊」も、この一文から着想を得たものだ。
私は昨今のハプバーを取り巻く状況を、この「幽霊」に対応させた。
Twitterアカウントという実体のないものが、本人の意思を離れて、ハプバーを徘徊していように思えるからだ。
先に述べたように、おでんくんやハップマンの実例は、「幽霊の存在を示す」典型である。
ほかのコラムでも言及しているところではあるが、ハプバーはTwitterと結合し新たな次元に入った。
あらた氏が指摘するのと同様に、私はそのこと自体を否定するつもりはない。
アングラの自衛であるということを強い意識しなければならない時代である。
【了】
【更新履歴】
2022/07/22公開
2022/07/25更新
2022/09/10新サイト転載