スタッフ対応満足度という視点
ごめっち氏がスタッフ対応に関するアンケートを実施し結果をランキングとして公表した。時間をかけてデータを取りまとめていただいた、ごめっち氏にまずは謝意を捧げたい。
今回のコラムは、ごめっち氏が公表した「スタッフ対応が良いお店ランキング」について、私なりの考察を記していきたい。
下に引用したXのとおり、ランキング結果は、男女ともにハーネス東京が2位以下に明確な差をつけて1位となった。
実はこのアンケートは今回が3回目であり、ハーネス東京は店をオープンした年に開催された前回アンケートでも、1位を獲得していることから、連続でのトップということになる。ハーネス東京がスタッフ対応満足度のナンバーワンのお店であることに、もはや疑いの余地はない。
この点については、前回のランキングで投稿した以下のコラムにもあるとおりである。
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【新基準】おもてなし時代の到来
SNSでの実質的な集客力ランキング
しかし今回のアンケートで私が注目したいのは、以下に示す「行ったことがあるお店」のランキング結果である。
これは実質的にSNSでの集客力の示す調査であると考えていいだろう。
以前に実施された相葉氏主催のランキングが形を変えたものだと考えてよいだろう。
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【実況解説】第4回 東京ハプバーランキング
SNSを通じたアンケートの有意性について
ランキングの結果について分析する前、次のように私のスタンスを示しておきたい。
それは、SNSでの調査であるため、アンケート結果にバイアスがかかっているのではないかという疑問に対する回答である。
3年前であれば、一部の意見を反映したものであり、いわゆる界隈のコンセンサスではない意見も妥当なものであったように思うが、SNSを通じてプロモーションを行う店も増加し、アングラ界隈のみならず社会全体でのSNSの利用が一般化している現況では説得力に欠ける主張であるように思う。お店がSNSで情報発信をしているか否かに関係なく、いまやアングラ界隈とSNSは切っても切れない関係にあるのは事実ではないだろうか。そのことを踏まえて、アンケート結果の分析をお読みいただければ幸いである。
さて話題を戻して「行ったことがあるお店」ランキングについて考察していきたい。
男女の別で1位と2位の順位に差異はあるものの、新宿リトリート、ハーネス東京、新宿440が上位3位を占める結果となった。
ここではこの3店舗を「Tier1」と定義し分析の対象としたい。
第1回(2021年)と第2回(2022年)にも同様のアンケートは行われており、結果は新宿リトリートがトップとなっている。
しかし第3回(2023年)では、男女合計ではわずかながらも、ハーネス東京が新宿リトリートを上回る快挙となった。
オープン1年目の第2回では6位あったことを考えると驚異的な躍進である。
SNSを通じた集客でハーネス東京が大きな成功を収めたことに、もはや疑う余地はないだろう。
話題が逸れるが、コロナ以前は集客力のあるお店といえば、渋谷SBと新宿リトリートが双璧を成していたが、2021年で渋谷SBは9位、2022年では後継のロシナンテは10位以下となっている。コロナ渦でイベントを中心とした集客ができなくなり、極めて制約的な営業体制で体力を奪われていったものと考えられるだろう。
ところで、普段のコラムで新宿リトリートを取り上げていないのは、同店がSNSで情報発信をしていない事情を鑑みたものである。
今回のコラムで限定的にコメントするならば、コロナ渦を経て、新宿リトリートの営業スタイルは界隈のメインストリームになったということである。上述のとおり、渋谷SBの苦境がそのことを象徴的に示していると言えるだろう。
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【追悼文】渋谷ロシナンテのクローズについて
ハーネス東京も営業のスタンスとしては、渋谷SBより新宿リトリートに近いものがある。
新宿リトリートの革新性は、既存店はDIYのような店づくりではなく、資金を投下し豪華なインテリアにした点にあると考えられる。カッシーナの椅子を置くような豪華さは、既存の店舗にはない斬新さであったのだ。つまり、新宿リトリートはラグジュアリーという概念を導入したのである。当然のことながら、アンダーグラウンドとラグジュアリーという一見して相容れないコンセプトの店作りについては、賛否両論があったことは想像に難くない。
しかし今や豪華な内装は当たり前になっており、DIY型の店舗に対してはネガティブな印象を受けるユーザーも少なくないと思われる。
一方のハーネス東京といえば、ラグジュアリーというコンセプトを継承しつつ、さらにアンダーグラウンドに特化した形でリモデリングさせたのである。ハーネス東京の内装については、以前にも以下のコラムでも取り上げたが、ここで説明するよりも実際にお店に足を運べば、実感できるはずだ。
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【神は細部に宿る】鴨葱ラーメンとハーネス東京
そして、さらにハーネス東京は容姿やコミュニケーションにおいて上質な接客ができるスタッフを採用することで、「ホスピタリティ」というコンセプトを導入した。
新宿リトリートと同様に様々な反応があるに違いない。しかし今やDIY型の店舗はマイノリティであることを踏まえれば、ハーネス東京が用意した「ホスピタリティ」というコンセプトもフォーロワーが現れて、将来はメジャーになっているのかもしれない。
実際に別のアンケートでもハーネス東京への支持は高く、週末イベントが盛況であったことが想像される。
今回のランキングは、そのような界隈の未来を我々の前に提示しているかのようだ。
【了】
【追記】その他店舗の動向について
本項ではランキングトップのハーネス東京を中心に論旨を展開したが、普段コラムでの取り上げるお店についても、ランキングの結果を考察していきた。
まずは上位3位となった新宿440であるが、いわゆる「わいわい系」としては代表的なお店になったことが伺える結果だ。
集客力もさることながら、接客の満足度も40%と標準的な評価となっている。
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【歌舞伎町の良心】サラダバー440を完全解説
続いては、スカーレット東京であるが、オープン1年も満たないことを考慮すれば、大健闘といえるだろう。
接客の満足度も男性では50%と高評価であり、「伸びしろ」の大きさを感じさせる結果となった。
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【黒船来航】スカーレット東京の研究
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【14年ぶりのカップル喫茶】スカーレット東京、新宿にオープン
最後に取り上げる渋谷ミルフォイユについては、スカーレット東京と同様にオープン1年未満と考えれば順当である。
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【会員制ダイニングバー】渋谷ミルフォイユの研究
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【渋谷ミルフォイユ】会員制ダイニングバーは食べログに挑戦するのか?
接客の満足度についてはアンダーウェイトであるが、上記コラムでも取り上げたような独自スタンスでの営業を考えれば、これは店の特徴と言うべきなのかもしれない。
もっとも接客の満足度が上昇すれば、更なる集客力が望めると考えることも可能であり、接客に特化したスタッフの採用など、今後の躍進が期待されるところである。